サンケイスポーツ
「西、アカンなあ、おーん。あんだけ初球、バンバン打たれるか。ちょっとわからんけどなあ」
岡田独特の「おーん」は、新聞に載ると何かの呪文のようになった。
そして岡田夫人がふと口にした「ARE(アレ)」が、優勝を意味する象徴的な言葉になり、岡田阪神は18年ぶりに優勝、日本一に輝いたのだ。
一貫していた野手の起用法
筆者が本当に感心したのは、岡田監督の選手起用だった。端的にそれがわかるのは、主要野手の守備別の起用試合数だ。
【2022年 矢野燿大監督】
梅野隆太郎:(捕)98
大山悠輔:(一)100 (外)39 (三)7
糸原健斗:(三)91 (二)63 (一)5 (指)1
中野拓夢:(遊)135
佐藤輝明:(外)115 (三)73 (二)1
近本光司:(外)132
島田海吏:(外)114
ロハスJr:(外)48 (指)1
【2023年 岡田彰布監督】
坂本誠志郎:(捕)83
梅野隆太郎:(捕)71
大山悠輔:(一)143
中野拓夢:(二)143
佐藤輝明:(三)129
木浪聖也:(遊)126
近本光司:(外)127
ノイジー:(外)125
森下翔太:(外)90
前年の矢野監督は、好不調や対戦相手などによって選手の顔ぶれを変えた。また守備位置もあれこれ変えたが、岡田は梅野が負傷した後、捕手に坂本を起用し、遊撃の中野を二塁にコンバートした以外は、選手をいじらなかった。
「そんなん、選手はポジション決めたら信頼して使い続けなあかんやんか、おーん」という声が聞こえてきそうだが、重厚で見事な采配だった。
岡田監督の退任発表後に、阪神の杉山健博オーナーは、
「監督就任要請の時に2年間ということでお願いをいたしました。2年間としたのは、タイガースの監督が非常に激務であること、それと監督のご年齢を考慮して2年と設定しました」
と語った。
地位に恋々としないあっさりした引き際も「ええしのぼん」の岡田彰布ならではであろう。見事な2年間だった。