サンケイスポーツ
「西、アカンなあ、おーん。あんだけ初球、バンバン打たれるか。ちょっとわからんけどなあ」

 岡田独特の「おーん」は、新聞に載ると何かの呪文のようになった。

 そして岡田夫人がふと口にした「ARE(アレ)」が、優勝を意味する象徴的な言葉になり、岡田阪神は18年ぶりに優勝、日本一に輝いたのだ。

2023年11月、日本一に輝き優勝旗を受け取る阪神・岡田監督(右)=京セラドーム(写真:共同通信社)
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一貫していた野手の起用法

 筆者が本当に感心したのは、岡田監督の選手起用だった。端的にそれがわかるのは、主要野手の守備別の起用試合数だ。

【2022年 矢野燿大監督】
 梅野隆太郎:(捕)98
 大山悠輔:(一)100 (外)39 (三)7
 糸原健斗:(三)91 (二)63 (一)5 (指)1
 中野拓夢:(遊)135
 佐藤輝明:(外)115 (三)73 (二)1
 近本光司:(外)132
 島田海吏:(外)114
 ロハスJr:(外)48 (指)1

【2023年 岡田彰布監督】
 坂本誠志郎:(捕)83
 梅野隆太郎:(捕)71
 大山悠輔:(一)143
 中野拓夢:(二)143
 佐藤輝明:(三)129
 木浪聖也:(遊)126
 近本光司:(外)127
 ノイジー:(外)125
 森下翔太:(外)90

 前年の矢野監督は、好不調や対戦相手などによって選手の顔ぶれを変えた。また守備位置もあれこれ変えたが、岡田は梅野が負傷した後、捕手に坂本を起用し、遊撃の中野を二塁にコンバートした以外は、選手をいじらなかった。

「そんなん、選手はポジション決めたら信頼して使い続けなあかんやんか、おーん」という声が聞こえてきそうだが、重厚で見事な采配だった。

 岡田監督の退任発表後に、阪神の杉山健博オーナーは、

「監督就任要請の時に2年間ということでお願いをいたしました。2年間としたのは、タイガースの監督が非常に激務であること、それと監督のご年齢を考慮して2年と設定しました」

 と語った。

 地位に恋々としないあっさりした引き際も「ええしのぼん」の岡田彰布ならではであろう。見事な2年間だった。