東京ドームは老朽化が進んでいる(写真:kuremo/Shutterstock)
  • 東京都心では、2つのスタジアム構想が持ち上がっている。一つは築地市場跡地で、もう一つは明治神宮外苑地区。いずれも再開発計画に盛り込まれる。
  • 神宮外苑はプロ野球・ヤクルトの本拠地となる見込みだが、気になるのは築地市場跡地に建設が予定される多目的スタジアムの行方だ。巨人が本拠地を東京ドームから移すという見方がある。
  • Mazda Zoom-Zoomスタジアム広島(マツダスタジアム)の設計に携わった追手門学院大の上林功准教授の話を基に、可能性を検証する。

(田中 充:尚美学園大学スポーツマネジメント学部准教授)

 巨人が本拠地を置く東京ドームは、オープンから30年以上が経過して老朽化が進む。築地市場跡地の再開発には巨人の親会社である読売新聞社、ドームを完全子会社化した三井不動産も名前を連ねる。読売は現状、「移転ありき」を否定するが、スポーツ紙などのスポーツメディアは「巨人と多目的スタジアム」に軸足を置いた報道が目立つ。

 一方、プロ野球・広島の本拠地となったMazda Zoom-Zoomスタジアム広島(マツダスタジアム)の設計に携わった追手門学院大の上林功准教授は、「築地市場跡地の多目的スタジアムは、国際コンベンションも開催できる東アジア最大規模の集客施設であり、スポーツでも利用可能な屋内施設と言ったほうがわかりやすい。その用途は多様で、プロ野球の本拠地ありきではないはず。巨人の本拠地移転に偏った報道には違和感がある」と指摘する。

 東京駅から南へ約2キロに位置する「東京の台所」と呼ばれた築地市場の跡地。2018年に80年以上の歴史に幕を下ろした市場跡地は地下鉄4路線の駅から徒歩圏内で、東京駅から有楽町を経て東京ビッグサイトまでをつなぐ地下鉄新線の新駅構想もあるなど、利便性に恵まれた好立地だ。

ONE PARK × ONE TOWNに関する東京都都市整備局資料より
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 広さは19万平方メートルで東京ドーム約4個分。“ONE PARK × ONE TOWN”をコンセプトに商業施設やホテル、住居棟などの建設が予定される広大な敷地において、中核施設となるのは、多目的スタジアムだ。最大5万7000人が収容可能の全天候型の施設は可動席などで内部の形を変幻自在に変えられるため、野球やサッカー、バスケットボールといった多様なスポーツにとどまらず、音楽ライブなどの開催も可能とする。

 これらの施設の多くは、2032年度の竣工を予定している。

 そんな築地市場の跡地利用には、かねてから巨人の本拠地移転が取り沙汰されてきた。