住宅街として発展を遂げる埼玉県川口市(荒川土手より)

山下 和之:住宅ジャーナリスト)

 埼玉県川口市。かつては鋳物の街、キューポラのある街として地場産業が盛んだったが、1980年~1990年代にかけて工場の移転や閉鎖が続き、駅前を中心に再開発が進んだことから、マンションの一大供給地となった。それが今、再開発が一段落して、駅周辺から一歩奥まった地域で戸建住宅の開発が盛んになっている。「マンションの街」から「戸建住宅の街」へと川口市は大きな変貌を遂げており、注目度が高まっている。

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「ほんとうに住みやすい街」首都圏ランキングで2年連続トップ

 埼玉県川口市の中心部であるJR京浜東北線の川口駅周辺には、かつて鋳物工場が建ち並び、その北隣の西川口駅の駅前には風俗店などが密集していた。

 それが、1970年代のオイルショックによって鋳物工場の移転や廃業が相次ぎ、景気の後退や取り締まりの強化によって風俗店も減少したことで、どちらの駅でも大規模な再開発が進められた。そして、多くのマンションが建設され、急速に東京のベッドタウンとなった。

 荒川を隔てて東京都に隣接する立地で、JR京浜東北線なら東京駅までわずか25分ほどで、赤羽駅でJR埼京線に乗り換えれば新宿駅、渋谷駅まで30分前後で行ける足回りの良さが改めて認識されるようになった。

 マンション建設と同時に、駅前の整備が進んで商業施設などの生活利便施設も充実、住宅地としての人気も高まった。住宅ローン大手のSBIアルヒが調査した「ほんとうに住みやすい街」ランキングでは、2019年、2020年と2年連続で首都圏のトップになったほどだ。

 同調査はその街に住んでいる人たちに実際に住み心地を聞いて集計した結果のため、単なる「住んでみたい」といった憧れ的なランキングとは異なり、信頼性が高い調査と言える。そこで2年連続トップになったことは注目に値する。