首都圏などの大都市部に住んでいると実感が湧かないかもしれないが、実はいま全国的に1階建ての「平屋住宅」が増えているという。なぜ、いま平屋が注目されているのか。住宅ジャーナリストの山下和之氏がレポートする。(JBpress編集部)
平屋回帰の背景にある「世帯構成の変化」
リクルートのSUUMOリサーチセンターの調査によると、2014年には新設住宅の専用住宅(店舗、事務所などと併用しない居住を目的に建築された住宅)のうち、1階建ての平屋住宅が占める割合は7.6%だったが、2022年には13.7%まで増えている。8年の間に2倍近くに増えている計算だ。
なぜ、いま平屋住宅なのだろうか。それにはさまざまな要因が考えられる。
まず、世帯構成の変化が挙げられる。かつては、祖父母、親、子どもの3世代が住むのが当たり前だったのが、いまでは親子だけ、それも子どもが1人か2人の少人数化が進んでいる。夫婦だけで子どもを持たないDINKs(ディンクス)も増加している。子どもができないのではなく、あえて子どもをつくらないという夫婦も増えている。
単身世帯も増加中だ。単身だと賃貸住まいが当たり前だったが、老後の住まいや資産のことを考えると、一生シングルでもあっても、住宅を持っておいたほうがいいという考え方が強まっている。
しかも、在宅勤務を可能とする会社が増え、都心でなくても郊外や地方でもいいという人が多い。地方なら広い敷地を確保できるので、2階建て、3階建てにする必要もない。平屋で十分ということになる。
しかも、この少人数世帯化の傾向は今後ますます強まりそうで、弱まることは考えにくい。
【図表1】は、国立社会保障・人口問題研究所が、日本の世帯数の将来設計を行ったデータから、平均世帯人員数の予測をピックアップしている。
全国平均では、2015年には1世帯2.31人だったのが、2020年には2.24人、2025年には2.18人と段階的に減少し、2030年には2.07人と平均2人近くまで減少する。夫婦だけの世帯が中心の社会になっていくと予測されているわけだ。
なかでも、東京都の世帯人員が最も少ないのだが、2015年段階で1.99人とすでに2人を切っており、2040年には1.88人まで減ってしまうとみられている。
とはいえ、東京都で戸建て住宅を持つのは簡単ではないし、まして平屋住宅は最高の贅沢といっていい住まいと言える。庶民にとっては文字通り「高値の花(高嶺の花)」だ。しかし、地方などでは少人数世帯化を反映して、平屋住宅が増殖している。