(山下 和之:住宅ジャーナリスト)
不動産広告で、実際には存在しない物件や取引の意志がない物件などを宣伝する、いわゆる「おとり物件」がなかなかなくならない。調査によると、賃貸物件を探した人の4割以上がおとり物件に遭遇したことがあると回答しているほどだ。今回は、おとり物件の手口の実態を取り上げ、その対策を紹介したい。
賃貸探しをした人の42%が「おとり物件」に遭遇
国土交通省が2023年1月12日、不動産・建設経済局不動産業課長名で、全国宅地建物取引業協会連合会、全日本不動産協会、不動産協会などの業界団体の会長、理事長あてに「いわゆる『おとり広告』等の禁止の徹底について」という通知を出している。
例年、3月、4月の年度末から年初にかけて不動産取引が活発になり、それに乗じる形でおとり物件が増加するため、業界団体としてその撲滅を徹底、広告の適正化に取り組んでほしいというお願いの文書だ。そんな文書を毎年のように出さなければならないほど、おとり物件が横行している。
かつて不動産業界は、本当のことが“千のうち三つしかない”という意味で「千三つ屋」と揶揄される存在だった。近年は正常化が進んでいるとはいえ、まだまだ悪しき慣習がおとり物件として残っているといっていいのではないだろうか。
たとえば、オンライン賃貸プラットフォームのエアドアが、2年以内に引っ越しを経験した東京在住の20~50代の男女を対象に「部屋探しについてのアンケート」を実施したところ、42%の人がおとり物件に遇ったことが「ある」と答えている。実に4割以上の人がおとり物件で苦い思いをしているのだ。
実際におとり物件に遭遇した人たちの感想として、〈不動産会社に信頼感がなくなりました〉〈釣るような広告の仕方をしていると信頼にかけるなと感じる〉〈その不動産屋はあてにならないなと思いました〉などといったコメントが紹介されている。