右肩上がりの不動産価格が続いていた米ニューヨークのマンハッタン地区も曲がり角を迎えるのか(写真:アフロ)

米国でシリコンバレーバンクが破綻してからまもなく1カ月。株価が持ち直しの動きを見せるなど、一見すると落ち着きを取り戻した感もあるが、それはFRBの救済策などによって本質的な問題解決を先送りしているからに過ぎない。米国はさらに大きな金融危機に向かっていると筆者はみている。(JBpress)

(市岡 繁男:相場研究家)

バーナンキも「量的緩和は一時的」と言っていた

 今年3月のシリコンバレーバンク(SVB)破綻は、預金の流出を原因とする流動性危機でした。破綻の連鎖を回避するために、米銀は一時、米連邦準備制度理事会(FRB)から1日平均1170億ドルの特別融資(discount window)を受けることになりました。

 FRBの必死の対応で危機の広がりは避けられたように見えますが、この金額は2008年に発生したリーマン・ショック時を上回るものなのです。

 さらにFRBは、BTFP(Bank Term Funding Program)という制度を新設し、銀行に626億ドルを貸出しました。これは銀行が持つ、評価損を抱えた債券を担保として受け入れ、額面相当額を融資するものです。

 この融資についてFRBは、あくまで「一時的」なものであり、1年後には返済されるので金融緩和ではないとしています。

 しかし思い出してください。リーマン・ショックの際も、当時のバーナンキFRB議長が「量的緩和は一時的」だと断言したのです。

 12年後のいま、FRBのバランスシートはコロナ禍への対応などで急拡大し、当時の9倍に膨張しています。BTFPもこの先、さらに膨張し、最終的に民間銀行が保有する低利の国債・政府機関債の相当部分をFRBが肩代わりするのでないでしょうか。