米国や欧州から銀行の経営破綻や救済に関するニュースが相次いで届いている。世界的な利上げによる景気への影響も懸念されるなか、われわれはどこに注目していけばいいのか。今回は過去の金融システム不安との連動性もみられる「信用スプレッド」を取り上げる。
(平山 賢一:東京海上アセットマネジメント チーフストラテジスト)
信用リスクに神経質になり始めた
米シリコンバレーバンク(SVB)の経営破綻をきっかけに、米国だけでなく欧州も含めて金融機関が揺れている。
その要因をたずねれば、想定以上に上昇したインフレ率に対して、米連邦準備制度理事会(FRB)が慌てて利上げを急いだことに行き着く。強力な金融引き締めは、米財務省証券の利回りの急上昇(債券価格の急落)を招き、その財務省証券を大量に保有していた金融機関の財務状態悪化を招いたためだ。
本来、中央銀行は、物価の安定をはじめとする健全な経済を維持するだけでなく、金融システムの安定も目指しているが、前者のための金融政策が、後者の金融システム不安を巻き起こしてしまったのである。
注意しなければいけないのは、金融機関の不安定化は、企業や個人にとっても、その資金繰りや資金調達に影響するという点。金融機関の状況が優れなければ、貸し出しを抑制し、信用度の低い借り手は資金手当てができなくなる可能性があるからだ。
多くの人々や企業は、2020年までの金融緩和環境で容易に資金調達が可能だっただけに、世の中の変わりように驚かざるを得ないはず。金融システムの揺らぎに端を発し、世の中は、信用リスクに対して神経質になり始めているのである。