過度な信用リスクをとるべき時期なのか

 われわれは、このような信用スプレッドの変化を把握することで、様々な意思決定に応用することが可能になる。資金調達がしやすく信用スプレッドが小さ過ぎるときには、企業は社債を発行して資金調達するのが有利であり、債券投資家は、債券投資を避けるのが得策という判断基準として活用できる。

 金融システム不安が深刻化する時期に信用度の低い債券を購入していると、その信用スプレッドの拡大で大きな損失を被ることになるだろう。

 ここ数年のような信用スプレッドが安定的に低位で推移している時期、債券投資家は少しでも高い利回りを求めて、低格付債券に積極的に投資していた。利回りを確保するにはハイイールド債投資が魅力的に見えたからである。

 しかし、世界の国債利回りは大幅に上昇し、0%に接近していた米財務省証券の利回りも一時は4%を上回るまで上昇している。最も信用度の高いとされる米国債の利回りが上昇しているなかで、過大な信用リスクを負ってまで低格付債券に投資する必要があるかどうかについて、再検討すべきかもしれない。

 その意味では、わが国のBBB格の信用スプレッドが足元で上昇傾向に転じているのは、2018年以降落ち着いていた状況の転換点であるか否かを注意深く見ていきたいところ。

 健全な経済状態を維持するために、世界中の中央銀行は、不安定な物価変動を抑え込むべく政策金利の引き上げを加速させてきたが、その裏で金融システム不安は芽吹いている。

※本稿は筆者個人の見解です。実際の投資に関しては、ご自身の判断と責任において行われますようお願い申し上げます。YouTubeで動画シリーズ「ハートで感じる資産形成」(外部サイト)も公開しています。