
1月下旬、囲碁の日本棋院と関西棋院が2024年の賞金・対局料ランキングを発表した。1位は当サイトでもインタビュー記事を掲載した一力遼四冠(棋聖・名人・天元・本因坊)の1億2181万円で2年連続のトップ。世界戦(応氏杯)も制した一力氏の活躍は誰もが認めるところだろう。今回は囲碁界の知られざる賞金事情と厳しい勝負の世界について、囲碁ライターの内藤由起子氏に解説してもらった。(JBpress編集部)
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「黄金の椅子」と呼ばれる名人戦の挑戦者決定リーグ戦
プロ棋士の収入には、主に対局料とタイトル料がある。
棋戦は予選も本選もトーナメント戦だけで優勝が決まるものもあるし、予選トーナメント戦を勝ち抜いた棋士がリーグ戦に参加し、さらにリーグ戦で優勝すると挑戦手合に進める、という長丁場のものもある。
トーナメント戦は、勝ち負けに関係なく対局すれば対局料が発生する。棋戦によって予選1回戦は○円、2回戦は○円などと決まっているが、詳細は公表されていない。公表されているのは優勝賞金(一部は準優勝賞金)のみである。
もちろん負けたらその年のその棋戦は終わりになるので、1勝もできないと1年で10局程度しか打たない棋士もいる。1局数万円としても、10局程度ではとても生活ができない。
名人戦の挑戦者決定リーグ戦は9人が在籍できる。トーナメントは負けたら終わりだが、リーグ戦に名を連ねることができれば、負けても次の対局がある。しかも、9人の総当たり戦ともなれば1局数十万円と言われる対局料が必ず8局分獲得できるので、1年間の生活が安泰となることから、「黄金の椅子」と呼ばれている。
そんな対局料を積み重ね、タイトルを獲得すれば優勝賞金(タイトル料)がもらえる。当然だがタイトル料は、各棋戦1人しか手にすることができない。
この対局料とタイトル料だけで生活できるプロ棋士は40~50人程度とほんのひと握り。棋士全体からいえば1割ほどだ。