左から藤沢里菜女流本因坊、上野梨紗二段、上野愛咲美女流二冠(撮影:宮崎訓幸、撮影協力:囲碁将棋喫茶樹林)

 9月23日~10月8日にかけて中国・杭州市で開催されるアジア大会の競技種目に「囲碁」があるのはご存じだろうか。

 アジア大会では、オリンピック競技に加え、開催国が競技を追加できる。たとえば今回は、クリケット、ソフトテニス、ドラゴンボート、カバディ、セパタクロー、ボードゲーム、eスポーツなどが採用されている。囲碁はブリッジ、チェス、シャンチー(中国象棋)とともにボードゲームに含まれる。シャンチーがあることからもわかるように、開催国の中国が金メダルを狙える競技が追加されたようだ。

 囲碁は男子団体戦(5人)、女子団体戦(3人)、男子個人の3種目が行われ、もちろん日本の代表選手たちも出場する。そのなかでも金メダルが狙えると期待されている女子団体戦の藤沢里菜女流本因坊、上野愛咲美女流二冠、上野梨紗二段(姉妹)の3人に意気込みを聞いた。

チームワークも大事なアジア大会「団体戦の魅力」

──アジア競技会で囲碁が競技として採用されるのは、2010年の中国・広州大会以来のことです。もちろん3人ともアジア大会は初出場になりますが、選手に選ばれた感想から聞かせてください。

藤沢里菜(ふじさわ・りな)/現タイトル:女流本因坊
1998年9月18日生まれ、25歳。埼玉県出身。故藤沢秀行名誉棋聖門下。獲得タイトル数22。2010年、11歳6カ月でプロ入り。女流棋士特別採用最年少記録。2023年六段。2020年には広島アルミ杯・若鯉戦(男女混合公式戦)で女性棋士として史上初の優勝を遂げる。一般(男女混合)棋戦でも、ベスト8(女性最高)やリーグ入りまであと1勝と迫るなど、男女の垣根を越えた活躍を続けている。

藤沢里菜女流本因坊(以下、藤沢) とても嬉しいです。私がプロになったのがちょうど2010年で、その大会に選手で参加していた謝依旻先生(七段)が思い出話をよくされていたので、私もいつか出場できたら楽しそうだなと思っていました。まさかそのときは自分が出られるとは思っていませんでしたが……。

上野愛咲美女流立葵杯・女流名人〈以下、上野(愛)〉 私も謝先生から「色々な国の選手に会えるから楽しいけど大変。頑張ってね」と激励の言葉をいただきました。

 アジア大会はオリンピック傘下の大会なので、勝てばメダルももらえますし、普段の国際棋戦と違って団体戦で戦うというスタイルも魅力的で、とても楽しみです。スポーツ選手と同様に厳しいドーピング検査もあるんです。

上野愛咲美(うえの・あさみ)/現タイトル:若鯉杯、女流名人、女流立葵杯
2001年10月26日生まれ、21歳。東京都出身。藤澤一就八段門下。獲得タイトル数12。2016年プロ入り。2023年五段。2019年竜星戦(全棋士参加棋戦)で準優勝。2021年広島アルミ杯・若鯉戦(男女混合棋戦)で優勝、翌年連覇。2022年SENKO CUPワールド碁女流最強戦2022で日本女性として世界戦初優勝を果たす。藤沢里菜と同様、一般棋戦でも活躍している。

――里菜さん、愛咲美さんは実績十分ということで選抜されましたが、梨紗さんは予選で出場を勝ちとりました。

上野梨紗二段〈以下、上野(梨)〉 いつもそんなことはないのに、予選の前日は緊張して2、3時間しか眠れませんでした。

 もちろん出場できることになって嬉しいのですが、今となっては責任感のほうが強くなっています。棋士のみんなが「頑張ってね」と応援してくれているので、プレッシャーも感じていますね。

 ただ、姉(愛咲美)と一緒なのはとても気楽で心強いです。里菜先生も以前から仲よくしてくださるので、その点では緊張せずに試合に臨めるのではないかと思っています。

上野梨紗(うえの・りさ)
2006年6月24日生まれ、17歳。東京都出身。藤澤一就八段門下。2019年プロ入り。2022年二段。2023年女流本因坊戦挑戦者となる。若手一番のホープ。

――チームワークはばっちりですね。

上野(愛) そうですね。3人とも仲がよく、忘れ物とかしてもみんなで助け合っていけそうな気がします(笑)。

藤沢 確かにちょっとのことでは動じなさそうなメンバーではありますね。