9月23日から中国・杭州市で開催されているアジア大会。実は囲碁が競技に採用されていて、男子個人、男子団体、女子団体の3種目が行われる。その中でも特に女子団体は金メダルが狙える位置にいる。今回、日本チームで出場する藤沢里菜女流本因坊、上野愛咲美女流二冠の実力は世界トップレベルにあるので、団体戦の戦いいかんでは十分、優勝が期待できるのだ。その2人に上野梨紗二段を加えた「最強女子チーム」の3人に優勝への展望を語ってもらった。
(前編)『アジア大会に出場する囲碁「日本女子最強チーム」3人が互いの強さを語り合う』を読む
安定した強さを誇る中国・韓国の有名棋士
――アジア大会での試合は、期間が長く対局数も多いようですね。
藤沢里菜女流本因坊(以下、藤沢) 女子の団体戦は9月29日に始まって、10月3日までの5日間行われます。
1日2局ずつスイス方式(勝ち星、勝った相手の勝ち点などで優劣を決める方式)で予選を5回打って、上位4チームが決勝トーナメントに進みます。短期間でこんなに碁を打つことはあまりないので、体力も必要です。
――女子団体戦に出場するのは、中国、中国香港、日本、韓国、マレーシア、モンゴル、タイ、中華台北の8カ国・地域です。世界のなかで日本の位置はどのくらいだと思いますか。
藤沢 いまは囲碁AIを使わないトップ棋士はいないというほどAI研究が浸透しています。愛咲美ちゃん、梨紗ちゃんは大橋拓文七段ら仲間とAI研究会などに出ていますが、私は家でひとり研究しています。AIのおかげもあって人間自体もどんどん強くなっています。世界を見渡しても、上も下も差があまりない状況ですし、そういう意味では世界一になれるチャンスはあると思っています。
――ずばり、アジア大会で最大のライバル国はどこですか。
上野愛咲美女流立葵杯・女流名人〈以下、上野(愛)〉 やはり中国、韓国、台湾の3カ国です。
――確かにその3カ国と日本はプロ制度があるので、他の国と比べても実力は群を抜いていると思います。それぞれの国の注目選手を教えてください。
上野(愛) 中国は於之瑩(お・しえい)七段*1ですね。安定感が抜群で崩れない。序盤が強く、すぐに形勢が悪くならない印象があります。
*1:1997年11月23日生まれ、25歳。中国囲棋協会所属。女子国際戦で6回優勝しているトップ棋士。中国国内でも男女混合の新人王戦で女性棋士として初めて優勝した。
藤沢 韓国では崔精(チェ・ジョン)九段*2が強敵です。男子と混合の大会でも準優勝するなど、世界の女子ナンバーワンの存在です。崔精さんとは愛咲美ちゃんが打ち分け(勝ち負け互角)ていて、敵わない相手ではないと思いますが、棋風は手厚く、安定感があり、厚みが好きなタイプです。
*2:1996年10月7日生まれ、26歳。韓国棋院所属。劉昌赫(ユ・チャンヒョク)九段門下。韓国棋院所属の女性棋士では史上3人目の九段昇段。女子の国際棋戦での優勝多数。2022年の三星火災杯世界囲碁マスターズで名だたる強豪男性棋士に勝って女性棋士として初めて準優勝したのは記憶に新しい。
上野(愛) 崔精さんはあぐらで瞑想したりして、まるで仙人のよう。きりっとしています。ニューフェイスには絶対負けない印象があります。あと、対局中によくバナナを食べているイメージが強いです(笑)。