今年2月、ドコモ杯女流棋聖戦第3局で上野愛咲美(右)を破って女流棋聖のタイトルを獲得した仲邑菫(写真:共同通信社)

史上最年少タイトルも獲得して前途洋々だが…

 将棋の藤井聡太名人が史上初の八冠制覇を達成して盛り上がりを見せている一方、囲碁界に目を向けてみると、残念なニュースが飛び込んできてから1カ月以上がたった。2019年に史上最年少となる10歳0カ月でプロ棋士になって以降、将来が期待されていた仲邑菫女流棋聖(14/日本棋院所属)が韓国棋院に移籍する意向であることが報じられたのだ。

 仲邑女流棋聖は韓国棋院に客員棋士として移籍を希望。すでに韓国棋院への申請を済ませており、この件を日本棋院も了承しているという。2024年1、2月に行われる女流棋聖戦挑戦手合が終わったあと、3月にも移籍する予定だ。

 日本の囲碁界は20世紀までは世界でトップレベルにあり、最古のプロ制度があったことから、これまでアジアだけでなく欧米からも多くの外国籍の人材を棋士として採用してきたが、日本から出て他国のプロ団体に所属するのは初めてのケースだ。

 この決断について、いまに至っても仲邑女流棋聖本人からの肉声は聞こえてこない。

 一報を受けたインターネット上のファンの反応は、「応援したい」「強いステージに行きたい気持ちを尊重したい」といった好意的なコメントが多かったが、時間がたつにつれてさまざまな意見も聞かれるようになった。

 改めて仲邑女流棋聖のプロフィールを紹介しよう。

 仲邑菫女流棋聖はプロ九段の父親と元囲碁指導員の母親の間に生まれ、3歳から囲碁を始めた。6歳のときには未就学児の大会で優勝するなど、子どものころから頭角を現す。

プロ入り後、公式戦デビューした当時の仲邑菫(2019年、写真:西村尚己/アフロ)

 そして、小学生を対象に、世界戦で優勝するなど活躍できる棋士を育てる目的で設立された「英才特別採用」により、2019年に通常のプロ試験を経ずに史上最年少(当時)の10歳0カ月でプロ入りした。その後の活躍も目覚ましく、今年2月には史上最年少でタイトル(女流棋聖)を獲得した。

 こうして前途洋々に見える仲邑女流棋聖だが、実はプロ入り4年目の今年の成績は18勝18敗。昨年の48勝22敗の成績と比べて勢いがなくなっているのがわかる。勝負の世界に好不調があるのは当然だが、本人はさぞ悔しい思いをしているだろう。