日本の安全保障のためにやるべきでない

 歴史的に見ても日英同盟は成功したが、日独伊3国同盟は日本の安全には寄与しなかった。日英同盟はワシントン条約締結の際にアメリカの圧力により解消され、4カ国条約という多国間の枠組みに移行されたが、これは何の意味もなさなかった。

 結論として、「アジア版NATO」は実現性の問題以前に、日本の安全保障のためにやるべきではない。それよりも日米同盟をより双務的な関係にもっていくことにより、その信頼性の向上に注力すべきだ。

「憲法9条2項の削除」示すべきはその道筋

 第二は憲法問題だ。石破総裁は「9条2項の削除」を主張している。私はこれに全面的に賛成だ。自衛隊明記だけでは自衛隊が抱える矛盾を解消することにはならないと思うからだ。

 安倍元総理も同じ考えだったと思う。しかし、現実に改憲するとなれば少なくとも連立与党の公明党の賛同を得る必要があり、当時は、公明党は、9条はそのままで加憲を主張していたことから、安倍元総理は、先ず一歩進めるという観点から「自衛隊明記」を提唱されたと思う。

講演で憲法改正や防衛費の拡充について訴える安倍元首相=2022年4月3日午後、山口市(写真:共同通信社)講演で憲法改正や防衛費の拡充について訴える安倍元首相=2022年4月3日午後、山口市(写真:共同通信社)
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 政治家は評論家と違い現実に政策を進める責任がある。「9条2項の削除」は正論だが、これを現実政治の中で国民、他党を巻き込みどのように実現していくのか、その道筋さらには道程を石破総裁には提示してもらいたいと思う。

 最後に、立憲民主党の安全保障政策について述べたい。

 野田代表も含め今回の代表選候補者のすべてが日米同盟の重要性に言及していた。一方で、安全保障法制で認められた集団的自衛権の限定的行使容認に野田代表も含め「違憲」との認識を示している。

 ならば改憲して集団的自衛権を行使できるようにすべきだとするならば理解できるが、どうも限定的集団的自衛権の行使は違憲なのでやめろということのようである。

 これでどうやって日米同盟の信頼性を向上させようというのか、完全に論理矛盾をきたしている。

 また、野田代表は米国のアジアへの関与を維持させると強調されている。しかし、そのためにはアメリカにお任せでなくお互いに助け合う体制が必要なことは人間社会と同様である。

 友人に頼ってばかりいると、その友人が離れて行くのは当然である。この常識を野田代表には認識してほしい。