このために、場内アナウンスは「熱中症対策」を何度も訴えている。また、球場内にはアイスコーナーが設けられ、体を冷やすための氷が無料で利用できるようになっている。さらに右翼外野にはミストを噴出する「雲海」コーナーもある。暑い季節を「楽しもう」という演出ではあるが、それでも夏の野球観戦は厳しい。

マツダスタジアムのアイスコーナー(筆者撮影)
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マツダスタジアムのミスト「大雲海」(筆者撮影)
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 永年、屋外球場でシーズンの半分をプレーしてきた広島の選手はドーム球場を本拠地とする選手より「暑さ対策」はできているはずだが、さすがに今年は例年をはるかに上回る夏の暑さで疲労が蓄積したうえに、「残酷暑」が選手の体力を奪ったのではないか。

試合編成から考え直すべきとき

 阪神タイガースは、夏季には本拠地の阪神甲子園球場を高校野球に明け渡してロードゲームの旅に出る。かつて過酷な夏の遠征は「死のロード」と言われたが、今は、オリックス・バファローズの本拠地、京セラドーム大阪を併用しているので、むしろ甲子園より快適に試合ができるようになった。

 屋外球場を本拠地とする球団と、ドーム球場の球団とでは、環境による格差が開きつつある印象だ。

 さらに言えば屋外球場は雨による中止が避けられない。マツダスタジアムの広島主催試合も6試合が雨で流れた。この試合の代替試合が、日程を厳しくしている。これもドーム球場を本拠地とする球団は経験しない苦労である。

 来季の試合編成に当たっては、NPBは、屋外球場を本拠とする球団とドーム球場の球団の試合環境の「格差」に留意すべきだ。さらに異常気象のさらなる進行を想定して、9月以降もナイトゲームを増やすべきだろう。また昨今は、ナイトゲームの試合開始時刻は18時ちょうどが一般的になっているが、日没時間を考えれば18時30分にすることも考えたほうがよい。

日没後もマツダスタジアムは30度(筆者撮影)
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 さらに、阪神タイガースだけでなく、夏季の屋外球場での試合は、できるだけドーム球場に移行するなど、臨機応変な試合編成を考えるべきときだと思う。

 もっと言わせてもらえば、あまり注目されていないが、二軍の公式戦は真夏でもデーゲームが一般的だ。夏以降、暑さに耐えかねて、二軍戦の観客は減少する。こちらもそろそろ考えるべきときが来ている。

 選手ももちろんのこと、審判や観客にとっても「真夏の野球」は、過酷で、命の危険さえ考えるような状況になっている。地球温暖化は止まる兆しはない。ならばそれを見越した対策を先手を打って立てていくべきだと思う。