長野久義選手と著者(著者提供)

プロ野球解説者の小田幸平氏がおくる、各球団の現在地。セ・リーグ3連覇を達成し、今シーズンは悲願の日本一を目指す広島カープ。「圧倒的な強さ」と語るその理由と、盟友・長野久義の変わらない姿勢を綴ります。

丸が抜けた穴は総合力で埋められる

 昨年のリーグ王者・広島東洋カープは今季、セ・リーグでは巨人V9以来となる4連覇に挑みます。

 そんな偉業にチャレンジするカープの日南キャンプでは、とにかくジャイアンツから移籍してきた長野久義選手の存在感が際立っていましたね。ファンの方はもちろん、現場の選手やスタッフまで長野選手の一挙手一投足に注目・・・そんな雰囲気を感じました。

 チームの20代の中心選手たち・・・菊池涼介、田中広輔、鈴木誠也、安部友裕、堂林翔太の各選手たちとも話しましたが、彼らは口を揃えて長野選手のことを「ジェントルマン」と評していました。

 僕は現役時代、長野選手とともに自主トレを行った仲でもあるのですが、彼はとにかく「気遣い・気配りのできる男」なんですよ。僕が日南キャンプを視察した日にも、こんな出来事がありました。ある若手選手が打撃練習中にバットを折ってしまい、バットを交換するためにベンチに戻ってきたところ、いち早くそのことに気づいた長野選手が、スッと新しいバットを若手選手に手渡したのです。 

かつては自主トレ仲間だった長野選手と(写真:著者提供)。

 プロ野球界で、長野選手のような大ベテランが、若手にそこまで気遣いを見せるのは稀なケース。しかも、そんな振る舞いが自然にできてしまう。菊池選手や鈴木選手たちが「ジェントルマン」と評する所以ですね。すでに多くの後輩選手に慕われているようですし、長野選手本人も「やりやすい」と言っていました。

 もちろん、チームの戦力としてプラスの面もあります。レギュラー当確線上の中堅選手にとっては長野選手の存在自体が刺激になりますし、これから上を目指す若手にとっては、タイトルも獲得したことのある(2011年に首位打者、2012年に最多安打)強打者のトップレベルの技術に触れるチャンスでもある。

 単純に昨季の個人成績だけに注目すれば、丸佳浩選手が抜けた決して穴は小さいとは言えません。ただ、総合的に判断すれば長野選手の加入によって、その穴は十分に埋まるのではないでしょうか。