秋サケ不漁の原因は「温暖化による海水温の上昇」

「どうにもアキアジが獲れねえ」──。船に乗って46年、60代のベテラン船頭が嘆いた。

「水揚げは7年ほど前に底を打って、そこからは少しずつ回復してきているけどね。それでも10年ほど前と比べるとまだ半分以下。燃料費や人件費は上がるし大変だよ。これからは漁業者も海水温や潮流など漁場の管理をきちんとやっていかないとお手上げになっちゃうよ」

 秋サケ不漁の原因をめぐっては、温暖化による影響=海水温上昇をベースにさまざまな説が指摘されている。

 潮流の変化、稚魚の放流直後の好適水温継続期間の短縮、対馬暖流の影響強化などで稚魚のオホーツク海への回遊が阻害され生存率が低下する。海水温上昇でサバなどの捕食魚と分布域が重なり、捕食圧増加でサケ稚魚の生存率が悪化するなど、複合的な要因が絡み合っていると見られている。

 1989年(平成元年)のサケの水揚げは11万7961トン、604億円を記録していた。それが2023年(令和5年)になると、水揚げは5万7800トン、379億円まで落ち込んでいる。漁獲量で49%、金額で63%の水準だ。

 逆に、この数十年で存在感を増してきているのがブリである。1989年の水揚げは114トン、2733万円だったのが、2023年は1万3900トン、37億6000万円と水揚げは122倍、金額は138倍と天文学的な伸びを示している。

 白糠漁港においてはどうなっているだろうか。令和元年(2019年)以降の水揚げの推移は別掲表の通り。

 白糠漁港では平成27年(2015年)のサケの水揚げが1943トンあり、これが近年のピーク値である。一方、ブリは数字が確認されてからまだ数年。昨年初めて100トンの大台を超えた。

 ちなみに今年は9月5日の秋サケ定置網漁解禁から18日までで、サケは前年よりも少なく91トンで、ブリはさらに少なくわずか100キロ余り。昨年は9月だけでブリが90トンもの豊漁だっただけに、今年はブリの落ち込みの激しさが目に付く。

「今日(18日)で海水温が17℃台。ブリは18℃以上にならないとやって来ない」(漁協関係者)という。昨年よりも海水温が上がらないことが大きな要因となっているようだ。

ブリの水揚げブリの水揚げ(2023年筆者撮影)