天然ブリの品質改善、ブランド化に挑む企業

 そんな漁業・漁場DXの一貫として、町が期待を寄せる施設が9月から稼働を始めた。

 白糠町のふるさと納税のデータ分析や「白糠産品開発プロジェクト」を通じて返礼品の開発や商品改善に取り組んできた「イミュー」(本社東京、黒田康平代表取締役)が、白糠漁協敷地内に建設した全国初の天然ブリの鮮度保持水槽施設である。

 同社は、昨年は白糠町内に加工工場を建設し白糠漁港で水揚げされた7kg以上のブリを「極寒ぶり」としてブランド化し、ふるさと納税の人気返礼品として提供している。

 9月18日には施設の内覧会と試食会が行われ、棚野孝夫町長や漁協関係者など約30名が参加した。

ブランド化した「極寒ぶり」の試食会ブランド化した「極寒ぶり」の試食会が行われた(筆者撮影)

 もともとは漁業組合が競り場などとして利用していた建物の内部を改造し、4基の水槽(いけす)を設置。水揚げされたブリを水槽内で数日間、断食飼育する。

 その際、水槽内の塩分濃度を海水よりもやや下げるなどの「低活性活かし込み技術」(釧路市の株式会社リバーサーより技術提供)を応用して、ブリを低活性化させることで魚体にかかるストレスを軽減させる。

 また、飼育中はエサを一切与えないため胃の中が空になり、酸化を遅らせることが可能となる。その後、活〆、血抜き、神経締めを行う。これだけの手間をかけることで、鮮度の長期保存が可能となり、冷蔵で1週間ほど鮮度を保つことができるという。

水槽内を泳ぐブリ(筆者撮影)

 こうした天然ブリの品質改善は日本初の取り組みで、同社では一連の工程を経たブリを「極寒ぶり選熟」としてブランド化し、国内のレスランなどへの販売、さらには海外への販路拡大も検討中だ。初年度(2024年9月~11月)の取扱量は約2トンの予定で、来年度以降は2年目は2~4トン、3年目は4トンを目標としている。

「調理者にとって最高品質でおいしいブリの提供を目指したい」と意気込む黒田代表は一連のブリの品質アップDX(鮮度保持水槽施設における飼育での品質アップ)についてこう語った。

「当社は秋サケが不漁となり代わりに水揚げが増えてきた白糠町のブリを新たな水産資源として確立するため、漁師さんや漁協、町役場と協力し、『極寒ブリ』としてブランド化して昨年は町内の新たな加工工場もつくりました。

 新たに導入する鮮度保持水槽施設により、「極寒ぶり」のさらなる価値向上を図りたいと考えています。あいにく今シーズンはブリ漁が不調ですが、この難局を乗り切りたいですね。

 品質アップに向けた取り組みを何もしていない天然ブリは通常の取引値がキロ172円でしたが、『極寒ぶり』は単価キロ1200円まで引き上げました。さらに『極寒ぶり選熟』は取引の目標単価を3000円としています。地域にお金が落ち、活性化につながる活動にしていきたいです」

品質改善したブリを持つ黒田社長(筆者撮影)