~ 中小企業の今とこれからを描く ~
日本政策金融公庫総合研究所では、中小企業の今とこれからの姿をさまざまな角度から追うことで、社会の課題解決の手がかりを得ようとしています。最新の調査結果を、当研究所の研究員が交代で紹介していきます。今回は、高齢の経営者が向き合う問題を取り上げた連載の最後として、円滑な廃業について考えます。
(星田佳祐:日本政策金融公庫総合研究所 研究員)
高齢になってからの廃業が目立つ
帝国データバンク「全国企業『休廃業・解散』動向調査(2023)」によれば、2023年に休廃業または解散をした企業は5万9105件と、4年ぶりに前年を上回った。2020年以降、コロナ禍を受けた資金繰り支援策の効果により前年比で減少が続いていたが、足元では、支援策の縮小や物価高などの影響もあって再び増加に転じている。
ただし、そのうちの51.9%は、休廃業・解散直前の決算における当期純損益が黒字の企業である。また、休廃業・解散時の経営者の年代別の構成比をみると、70歳代は42.6%、80歳以上は21.7%で、高齢になってからの廃業が目立つ。業績が悪化する前に引退を決めて廃業するケースが少なくないことがうかがえる。
今回は、そうした引退に伴う廃業の実態を、当研究所が2023年に実施した「経営者の引退と廃業に関するアンケート」(以下、廃業調査)の結果をもとにみていく。
調査対象は、自身の引退によって廃業した元経営者である。廃業の理由として、「体力・気力の衰え」「高齢」「家族の介護や看病」などの経営者の事情、つまり、代わりに経営を担う人がいれば事業が継続されていたと考えられる理由を挙げたことを調査対象の条件としており、「売り上げの低迷」「取引先の廃業・倒産」「人手不足・人材不足」といった事業継続困難だけを理由に廃業した元経営者は含まれていない。
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