廃業に向けた準備を必要としなかった元経営者が多い

 まずは、廃業に向けた準備の状況である。

 廃業のために取り組んだことを複数回答で尋ねたところ、「特に取り組んだことはなかった」が70.5%と多数派となっている(図3)。残る3割弱は何らかの取り組みをしており、その具体的な内容は、「仕事量を減らすための仕事や取引先の選別」(14.4%)が最も多い。

 そのほか、「設備(機械・車両など)の売却」(5.9%)、「新たな設備投資の抑制」(5.5%)といった設備に関する取り組みや、「借入金の繰上返済」(4.8%)、「新たな借入の抑制」(3.7%)といった借入に関する取り組みが相対的に多い。

 他方、「従業員の新規採用の抑制」(4.1%)、「従業員の再就職先の斡旋」(3.0%)といった人に関する取り組みは少ない。廃業を決めた時の従業者数をみると、「1人(経営者のみ)」が71.2%、「2~4人」が24.0%、「5~9人」が3.7%、「10人以上」が1.1%となっている。事業規模が小さく、経営者のみ、あるいは家族のみで事業を営んでいたケースが多いため、雇用面での準備をする必要がなかったのだろう。


拡大画像表示

 また、廃業のために相談した外部機関や専門家を複数回答で尋ねたところ、「相談していない」の割合が79.7%と最も高い。相談した場合の相手は、「公認会計士・税理士」(9.2%)、「同業者・同業者団体」(5.2%)、「商工会議所・商工会」(3.7%)、「弁護士・司法書士」(3.7%)の順となっている。

 公認会計士・税理士への相談が比較的多い理由は、廃業に当たって税務署への届け出の手続きを依頼する必要があったり、財務諸表や税務書類の作成を通じて日頃から接点をもっていたりするためだろう。

 円滑に廃業できたかを尋ねた設問に対しては、58.3%が「円滑にできた」、36.9%が「どちらかといえば円滑にできた」と回答しており、両者の合計は95.2%に上る。元経営者は、廃業に向けて特別な準備を行うことなく、スムーズに廃業できているようだ。