日本型雇用システムこそが格差、強すぎる正社員保護

大内氏:解雇規制を見直すことは必要ですが、解雇規制の「緩和」というと途端に話が進まなくなります。正社員の既得権益が奪われるという感情的な反発が起きるのは当然だからです。日本経済の将来を考えたときに必要だと分かっている施策でも、自分のお金や雇用が脅かされるとなると反発するのが人情です。欧州で、年金の支給開始年齢を引き上げようとすると大暴動が起きたりするのも、これと同じような理由です。

解雇「緩和」というと話が進まなくなる(写真:yoshi0511/Shutterstock)

 ただ、もう少し踏み込んで考えると、日本型雇用システムでは、たとえ企業の経営が悪化しても、あるいは社員の能力が不足していたとしても、そう簡単に正社員を解雇することはないという意味で、正社員の雇用をきわめて強く守ってきました。その一方で、その被害者となっていたのが、景気変動などにより経営が悪化したときに真っ先に雇用調整の対象となる「非正社員」です。

 この労働市場の二重構造が、労働者間の不公平感や格差問題を生んでいました。これまでも、非正社員の待遇改善など格差をなくそうと言う政治家は数多くいましたが、非正社員の問題を考える上では、正社員のことも同時に考えなければ不十分です。正社員の安定雇用と非正社員の不安定雇用は密接な関係があったからです。

 もちろん政治家は、「非正社員の雇用の安定」ということは言いますが、「正社員の不安定化」などは選挙のことを考えると口にすることができません。しかし、非正社員の正社員化だけを進めることには限界があります。

 もし非正社員の雇用の安定化を進めるのなら、同時に、正社員の雇用保障を見直さざるをえないでしょう。そうしていくと、正社員と非正社員の格差は縮小していきますが、ある意味で全員が不安定雇用となるわけで、それが良い方向といえるかは何とも言えません。

──現状でも企業は希望退職を募集するなどすれば人員整理ができるのではないでしょうか。