東大生は「なぜ?」の問いに弱い
さて・・・。
これは東京大学内で長年、少なくとも筆者自身も知る40年以上にわたって、文系学生にしばしば見られる困った現象です。
「なぜ?」と問うても、根拠をメカニズムから答えられない学生が多いのです。
「斎藤君」の答弁は、そういう学生の典型、あまりできの良くない東大生の典型になっており、初期からそう思って見ていました。
一応、文字は一言一句、丸暗記して覚えてくる。ガリ勉のガッツがないわけではない。けれど、そこに記された数量の意味を全くどころか一度も考えていない。
いちいち考えていたら、試験範囲全部暗記はできないから、「全部思考停止!」が正しいと思い込んでいる。
こうした「考えたことのない学生」が珍しくありません。思考停止病と言ってもいいでしょう。
これを車の運転、ウインカーの例で考えてみましょう。
道路交通法53条1項と道路交通法施行令21条は、車のウインカーの出し方について
「車線変更を行う3秒前に、右左折時は右左折する地点から30メートル手前の地点に達した時に、ウインカーを出す」ことが定められています。
これを丸暗記するのは簡単ですが、「それって、なぜ?」と「法規の理由」を問われたとき、即答できない学生が非常に多い。
「江戸幕府ができたのはいつ?」と問うと、「1603年」は丸暗記してくる。でもそこで、「なぜ?」と問うと、キツネにつままれたような顔をするの学生が非常に多いわけです。
ここで、ウインカーについては、ちょっと頭を使えば簡単ですよね?
車線変更はいつでもできるから、場所の地点が特定されない。だから「3秒前」と時間で指定する。
これに対して「曲がり角」は地点が決まっていますから、その直前30メートルと空間で指定する。
3秒は「1、2、3」と数えれば直観的にも概算可能だし、30メートルという距離は、一般道で車線変更可能な白の破線の車線長が5メートル、間隔も5メートルですから「白黒白黒白黒」と3サイクル手前は目視目測することができる・・・と、理屈で整理すれば暗記する必要がない。
また、仮に時速36キロで走行していれば36キロは36000メートル、1時間は3600秒ですから1秒当たり
36000÷36=10
となり「3秒前」は 10メートル/秒×3秒=30メートルとなって、道交法の2つの指定は互いに整合性が取れている。
こういった法規の制定過程も明確。公務員も2種で入った人は、こうした現場の実情に精通していますし、県庁で下から叩き上げの人ならメカニズムを熟知していますから、条理を踏まえて個別判断が可能になる。
交通警官なら、接触事故などがあった際、車の推定時速が何キロ、地面に残されたタイヤ跡が、例えば交差点から9メートル手前にあった、といった状況証拠から
9 < 30
などと現場での「行政判断」を下していくことになる。
ところが、これができない人が2パターンいます。
一つは、中央などから派遣されてきたばかりで、現場を知らない駆け出しの高級官僚。
もう一つは、選挙の得票数で選ばれただけで、現場を知らない着任したての首長。知事。
そして、この2つの「ダメ条件」が重なり合った残念なケースが「斎藤知事」に相当します。