自衛官の募集は地方自治体主体に

 外国に行けば日本が懐かしくなる。これが愛国心であろうが、同様に国内にいても自分が生まれ育ったところがいつまでも懐かしい思い出としてついてまわる。郷土愛である。

 愛国心はなかなか掴みどころがないが、郷土愛となると誰にも理解できる。

 幹部を除くほとんどの自衛隊員は郷土を守る部隊に所属し、除隊後は郷土で活躍する。

 このことからは、自衛隊の募集業務を地方自治体の任務と位置づけるのが妥当ではないだろうか。

 実は現在の法令でも自衛官等募集に関しては地方自治体の法定受託事務(本来国がしなければいけない事務の中で地方に任せている事務のこと)と定められている。

 法定受託事務には戸籍関係の処理、生活保護の決定・実施、国政選挙や旅券の発行などがあり、自衛官の募集も下記のとおりである。

 自衛隊法第97条第1項で「都道府県知事及び市町村長は、政令で定めるところにより、自衛官及び自衛官候補生の募集に関する事務の一部を行う」と規定され、自衛隊法施行令第120条では、「防衛大臣は、自衛官又は自衛官候補生の募集に関し必要があると認めるときは、都道府県知事又は市町村長に対し、必要な報告又は資料の提出を求めることができる」と規定されている。

 しかし、自治体の広報板などに募集案内などを貼り付けることはあっても、広報誌などで積極的に広報することはほとんどないようだ。

 自衛隊の募集・広報隊員が自治体を訪問して適齢期の名簿などを依頼しても書き写しは許すがペーパーでくれるところは30%くらいでしかなかった。

 地域事務所の隊員は名簿の掘り出しに時間を要し、募集や広報をする時間を削がれてきた。

 反自衛隊的な教育がもたらした結果でしかないが、いつの時代にあっても自衛隊(軍隊)は無きに越したことはない存在であり、国民の誤解はつきものであろう。

 自衛官は任期間に隊員としての訓練や教育を受けるだけでなく、数年後には社会に復帰するという前提で技能教育や国家試験などのチャンスも設けている。

 従って、郷土に復帰した時には技能や国家資格も持ち礼節も弁えた好青年として十分通用するに違いない。

 現在の法令では「事務の一部」となっているからか、積極的協力どころか多くが消極的で、中には協力拒否の自治体もあると聞く。

 国民の義務とすべきであるところを有志に依存しているわけで、せめて募集くらいは積極的な協力があってもいいのではないだろうか。

 地方の過疎化が問題視されている今日である。

 自衛官募集に積極的に協力することは、その人士が数年後には除隊して帰郷し、地域の中心となって活性化のために活躍することでもある。このことに思い至ってほしいものである。