「白米を食べたい」に共感する開発担当者ならではの目標

 開発チームのメインに抜擢された本多さん、製造ラインで経験を積んだことを買われたのだろうと思っている。しかし公言はしていないのだが、実はもち麦が苦手なのだ。

「周りは薄々気づいていたと思いますけれどね」

 と苦笑いする彼女は、米どころの新潟県出身。美味しい白米が当たり前の食生活だったのに加えて、麦や雑穀の入ったご飯を食べた経験がなかったのである。

 はくばくで取り扱う大麦は、北陸で生産されたものが多く、富山、石川、福井県も米どころだが、二毛作で大麦を生産する。しかし新潟県ではそのような生産はあまりしていないため、馴染みがないのだろう。本多さんも今でこそ麦ご飯は白米とは別ものであること、機能性や白米とは違う美味しさがあると認識しているが、それまでは抵抗感が大きかった。

「でも、米好きだからこそ俯瞰した意見を出せる場面もあります。今回は開発チームにいる同期も、もち麦の匂いや見た目がない方が食べやすくなるんじゃないかなど、私と似た意見を持っていたので、白米に馴染んで美味しいものを作るんだというモチベーションはチームで共有できていたのですよね」

 と本多さん。

 今は広報を担当している手塚さんは、自身が製品開発課にいた頃を振り返ってこう話す。

「モチモチ・プチプチした食感こそがもち麦。それが販売を大きく伸ばした特徴だったので、そこは絶対に守らなくちゃいけない、崩したらもち麦ではなくなってしまうという固定観念が社内にあって、縛られていたように思います。本多たちは若手だからこそ縛られずに考え、ずっとお米で育ってきたという経験もプラスに働いて『白米に近いもち麦』の開発に繋がったのかなと思います」

1合あたりに50gを混ぜて炊いた状態。左が白米好きのためのもち麦、右が従来のもち麦(画像提供:株式会社はくばく)
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 はくばく本社のある山梨県では、学校給食に白米が出てくることは少なく、麦ご飯かパン、麺と子どもの頃から麦のある食事に馴染んでいる。普段の食生活で馴染みがあるか、その背景として地域性が大きいのではないか――本多さんは、白米に違和感なく混ぜられる新商品が全国的に受け入れられる可能性を感じている。