忙しくなると睡眠時間は削られがちだ(写真:mapo_japan/Shutterstock.com)

日中にこなさなければならないタスクに追われるあまり、睡眠を蔑ろにしてしまうケースも多い。しかし睡眠は、食、運動とともに健康を成り立たせる三要素として挙げられるほど人間にとって重要。安易に寝る時間を犠牲にしてしまうのはとても危険だ。もしも睡眠が足りていない自覚があるなら、『快眠法の前に 今さら聞けない 睡眠の超基本』(柳沢正史著、朝日新聞出版)が参考になりそうだ。“睡眠”を正しく理解し効果的に眠る方法を身につければ、毎日をより快適に過ごせるようになるかもしれない。

(東野 望:フリーライター)

日本は世界トップの寝不足大国

 あなたは毎日十分な睡眠を取れているだろうか? 日本人は世界的に見ても寝不足傾向にあると言われている。実際、忙しい日が続く中ではつい寝る時間を削ってしまうことも少なくないだろう。

 今回紹介する『快眠法の前に 今さら聞けない 睡眠の超基本』(朝日新聞出版)の著者で筑波大学教授の柳沢正史氏は、日本で慢性化する国民の睡眠不足が引き起こす弊害に対して警鐘を鳴らしている。

過去30年の間に、多くの先進国で認知症の発症率が徐々に減少していると報告される一方、日本では認知症の有病率や発症率が増え続けています。睡眠不足は個人の問題にとどまらず、企業の利益率や社会全体にも影響を及ぼします。日本経済の「失われた30年」も、もしかしたら日本人が抱える膨大な睡眠負債が、その原因の1つかもしれません。

 睡眠不足は集中力低下などの短期的な悪影響を及ぼすだけでなく、精神面での不調や生活習慣病、がんをはじめとするさまざまな病気の原因にもなりうる。睡眠と適切に向き合えるかどうかが、日々の暮らしのクオリティを大きく左右するのだ。

まずは自分の睡眠傾向を理解しよう

 著者の柳沢氏は、筑波大学・国際統合睡眠医科学研究機構の機構長を務め、「睡眠学者」として広く知られる人物。長年睡眠について科学的なアプローチを続けてきた、まさに“睡眠研究の第一人者”である。最近では睡眠を利用したスマートフォン向けゲームアプリ「Pokémon Sleep」(ポケモンスリープ)を監修するなど、人々の睡眠に対する意識向上に向けた取り組みも行っている。

柳沢氏が監修したスマホアプリの「ポケモンスリープ」(写真:Wachiwit/Shutterstock.com)

 柳沢氏曰く、より良い睡眠をとるためには、まず今の睡眠状況を見直すことが重要だという。「自分にどのような睡眠傾向があるのか」と、日記やアプリで記録しはじめるだけでも無意識のうちに行動が変化しやすくなるのだ。

意識を向けてみると、いかに自分が睡眠をおろそかにしてきたか実感するはず。まずは意識改革から始めることが大切です。