(勢古 浩爾:評論家、エッセイスト)

 9月24日(日)、急激に寒くなった日、深夜の3時ごろ(もう25日だ)に半袖のTシャツの上に長袖のパジャマを着た。その後、考えもしなかった変事に見舞われた。

 座った姿勢から立ち上がって便所に行こうとしたところ、全身の力が脱け、平衡感覚を失ってソファの下のほうに頭を突っ込んだのである。

 一瞬、なにが起きたのかわからなかった。両手でふんばって頭を上げようとするのだがびくともしない。嫌な記憶がよみがえった。まさか脳梗塞の再発か、と思い、両手両足を動かしてみた。なんの問題もない。自由に動く。

 一安心したが、だとしたらこれはどういうことだ? 10分か15分、両手両足の位置を変えてもがいた結果、なんとか立ち上がることができた。全身汗まみれである。

 ふらふらしている。伝い歩きで小用を終え、寝ればすこしはよくなるかと倒れこむようにして寝た。

力が入らない、喉が猛烈に痛い

 25日(月)、ふらふらするのはおなじで、体温も37度から38.5度はあった(平熱は35.5度だ)。なにをする気もせず午後6時まで寝た。

 その後起きたが、深夜2時ごろ、今度は周囲に積んでいる本の山にバランスを崩して頭を突っ込んだ。本の山をなぎ倒した。こんなぶざまな姿は家族には見せられんなとつまらんことを考える。

 普段175センチ73キロの体を苦に思ったことはなかったが、このときばかりはただの邪魔な肉塊でしかなかった。人間は2メートルの巨漢でも、どこか平衡感覚を失えば、指一本で倒れてしまうのだ。このときも汗でグショグショになった。

 26日(火)も事態は回復せず、また午後6時まで寝た。寝るのが楽なのである。市販の解熱剤は飲んでいた。しかしこれはいったい何なのか。両腕に満身の力を込めているのにまったく頭が持ち上がらないという筋無力や筋脱力は。

 痰はしきりに出るわ、咳やくしゃみをするたびに喉が削れらるように痛いわ、右ふくらはぎが2回もつるわで、散々である。