ドローンが有人戦闘機に取って代わるのはあと数十年無理

 ドローンが現在の有人戦闘機に取って代わるのはあと数十年は無理があるという。無人航空機は1世紀前から存在しており、いま巡航ミサイルとドローンの境界が曖昧になりつつある。ドローンは実際には前線から約1600キロメートル後方で人工衛星を介して遠隔操作している。

「ウクライナ戦争でこの種のドローンが見られなくなったのは5分ともたないからだ。トルコの中高度長時間滞空型無人戦闘航空機バイラクタル TB2バローン(TB2)はウクライナではもう見かけなくなった。その主な理由は、配備しても次々と撃墜されるからだ」(バグウェル氏)

 バグウェル氏によると、テンペストの無人機は次世代戦闘機のウイングマンとして攻撃能力を高める。8機の有人飛行隊は2機の有人機と6機の無人機に移行する。無人機がセンサー能力やオトリ能力を有人機に提供する。これで有人機の生存率が高まり、より多くの任務を遂行できる。

「F35-Bの航続距離は800キロメートル超で、搭載できる兵器も限られている。タイフーンは約2800キロメートル。テンペストはディープストライクの重要な役割を担う。ミサイルを撃ち落とすだけでは敵を抑止できない。最終的に抑止力となるのは敵に戦いを挑む方法だ」

 バグウェル氏は英国政府の財政難にもかかわらず、敵地の奥深くまで侵入して目標を破壊する能力を獲得するためにGCAPを継続する重要性を指摘した。

 保守党のジェームズ・カートリッジ影の国防相は7月24日、下院で「本当に重要なのは政府が今年、GCAPに資金を出すかどうかだ。いまGCAPから撤退することは1930年代(第二次大戦前夜)のスピットファイア(筆者注:ドイツ空軍の空爆から英国を守ったバトル・オブ・ブリテンで大活躍し「救国の戦闘機」と呼ばれる)計画を廃止することに等しいと私は考えている」とスターマー政権に計画継続の決断を迫った。

【木村正人(きむら まさと)】
在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争 「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。