2015年10月、ロシア軍によるシリア爆撃でも滑空爆弾が威力を発揮した。写真はKAB-500を発射するロシア空軍のSu-34(提供:Russian Defence Ministry's Press and Information Department/TASS/アフロ)

(国際ジャーナリスト・木村正人)

塹壕ごと兵士を吹き飛ばす

[ロンドン発]英日曜紙サンデー・タイムズは3月30日付電子版で次のように報じた。

「ロシアの滑空爆弾がウクライナ戦争を変える理由―旧ソ連時代の兵器にフィン(安定翼)と衛星ナビゲーション装置を搭載したことでロシア軍は前線の空を制しつつある」

 前線の兵士は塹壕を深く掘れば掘るほど生存確率が上がるとされる。しかし、ロシアの滑空爆弾は塹壕ごと兵士を吹き飛ばす威力を持つのだ。

 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は3月27日、2000キロメートルの要塞線建設を視察するため北東部スームィ州を訪れた。

3月27日、スームィ州の要塞建設現場を訪問したゼレンスキー大統領。塹壕や指揮監視所も視察した(提供:Ukrainian Presidential Press Service/ロイター/アフロ)

 ゼレンスキー氏が無理な反攻に固執したため、ロシア軍の侵攻を阻む要塞線の建設が遅れたと批判されている。ウクライナ軍が建設中の要塞線は3層からなり、鉄筋コンクリート構造物、戦車や歩兵戦闘車両に対する射撃陣地、波形鋼板のシェルターが含まれる。