英財務省「AUKUSか、テンペストかを選択しろ」

 しかし英国予算に220億ポンド(約4兆1600億円)の不足があることが分かり、GCAPにも“黄信号”が灯る。英紙タイムズ(7月20日)は英国の財務省高官が国防省に「AUKUS(原潜を建造する米英豪の安全保障協定)か、テンペストか」どちらかを選ぶよう提案したと報じた。

 7月22日、2年に1度開かれる航空宇宙・防衛の見本市、ファーンボロー国際航空ショーでGCAPへの支持を求められたキア・スターマー首相は「見直しは行われているが、この計画がいかに重要なものであるかを心に留めておくことは重要だ」と計画継続の明確化を保留した。

「テンペスト」はBAEシステムズ(英国)、レオナルド(イタリア)、日本の三菱重工業などが共同開発する予定だ(写真:Cover Images/Cover Images via ZUMA Press/共同通信イメージ:)
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 GCAPの資金不足を補うため、プロジェクトへの参加に興味を示すサウジアラビアが関与する可能性も取り沙汰される。

 同月24日、英下院で行われた首相質疑(PMQ)で保守党のリシ・スナク党首(前首相)からサウジとの協議継続の保証を求められたスターマー首相は直接の言及は避け「これは本当に重要な計画であり、すでに大きな進展がある。私たちはその進展の上に立ちたいと考えている」と述べるにとどめた。

 自分の手足を縛らないよう、できるだけ多くを語らないのがスターマー首相の政治的サバイバル術。英紙デーリー・テレグラフの元編集長マックス・ヘイスティングス氏は次世代の有人戦闘機はウクライナ戦争で使われる無人航空機(UAV)やミサイルより重要ではないと疑問を呈する。

 テンペスト反対派は、計画を廃止すれば代わりにロッキード・マーチン社のステルス多用途戦闘機F-35をもっと購入できると主張する。これに対し、国防ジャーナリストのフランシス・トゥサ氏は今年1月、王立航空協会に「唯一の道はテンペスト」と題し寄稿している。