式部が“再出仕”したのは藤原彰子に惹かれたから?

 理由はともかく、式部が宮仕えを辞めて早々と実家に戻ったのは、ドラマにもあった通りである。

 その後、実家で数カ月過ごしたかと思うと、また宮中に戻りたいと言い出した式部。ドラマでは、道長が喜びながらも「よく気の変わるおなごだな」とあきれたが、無理もないだろう。

 なぜ式部は、それだけ嫌だった宮仕えを再開させたのか。その理由はよく分かっていないが、ドラマでは、まひろに「中宮様ともっとお話ししたいと存じました」というセリフを言わせて「中宮の彰子ともっと親密になりたいがために、再び出仕した」という設定になっている。

『紫式部日記』をみても、紫式部が自分と同じく控えめな性格である彰子に魅力を感じていることがうかがえる。

 出産を控えて身体もつらいはずなのに、平静を装う彰子の姿を見たときには、「かかる御前をこそ、尋ね参るべかりけれ」(探し出してでも、このようなお方にこそお仕えすべきだ)とまで言っている。

 紫式部が出仕してすぐに実家に帰ったのに、再び出仕するという経緯は、描き方によってはダラダラして視聴者を退屈させてしまう。その経緯を『光る君へ』では放送1回分にまとめてしまったのは、よい判断のように思う。ここから彰子とまひろの関係がじっくり描かれるのではないだろうか。

 彰子が出産に至るまでのバタバタの中で、まひろの女房としての成長が見られるのが楽しみである。

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