アフリカから世界中に感染拡大する恐れがあるエムポックス

 エムポックスは、急性発疹性疾患で、2023年5月26日に感染症法上の名称が「サル痘」から変更された。名称変更は、2022年の流行時に感染者に対する差別的な表現が行われたことや、動物福祉の観点から、WHOが“mpox”に名称変更したことに伴う。

 1970年にザイール(現在のコンゴ民主共和国)でヒトでの初めの感染が確認されたが、エムポックスウイルスをもつ動物や、患者の体液・血液との接触で感染する。発症すると、発熱、頭痛、リンパ節の腫脹などの症状が出る。発熱から1~3日後に発疹が出現し、顔面や四肢に多く出現する。国内では感染症法上の4類感染症に指定されている。

 現在、中央アフリカから西アフリカにかけて流行している。8月13日公表のアフリカ疾病対策センターのデータによると、2024年には、1万7541人(対前年同期160%増加)の患者と、517人(同19%増加)の死亡者が発生。特に、コンゴ民主共和国で流行しており、感染者の96%、死亡者の97%は同国で発生しているという。

 8月15日にはスウェーデンで感染例が確認され、アフリカ以外では初めての感染例とされている。さらに、16日にはパキスタン、19日にはフィリピンでも感染者の確認が発表された。

 WHOは8月14日、エムポックスについて公衆衛生上の緊急事態を宣言した。実は、2023年5月に緊急事態をいったん終了した経緯がある。多くの感染症の専門家を擁する国際機関でも、感染拡大の先行きは見通しにくいことがうかがえる。

パキスタンでも感染例が確認され、世界的な感染拡大が懸念されるエムポックスパキスタンでも感染例が確認され、世界的な感染拡大が懸念されるエムポックス(2024年8月22日、写真:AP/アフロ)

 日本国内では、2022年7月に1例目の患者が確認され、現在、散発的な患者の発生が報告されている。

 エムポックスの主な感染経路は接触感染や飛沫感染とされる。発症すると、発熱、頭痛、リンパ節の腫脹などの症状が出る。発熱から1~3日後に発疹が出現する。発疹は顔面や四肢に多く出現する。

 欧州では、治療薬としてテコビリマットが承認されているが、日本では承認された治療薬はない。予防としては、天然痘ワクチンによって一定の発症予防効果があるとされている。