地球温暖化とともに高まっているデング熱の脅威

 デング熱は、ネッタイシマカなどの蚊によって媒介されるデングウイルスの熱帯性感染症だ。地球温暖化の影響で、熱帯以外にも感染が拡大することが危惧されている。

 蚊は、さまざまな生物の中で圧倒的に多くの人の生命を奪う生き物として“君臨”している。

 世界保健機構(WHO)などの統計をもとに2016年にビル・ゲイツ財団が発表した数字によれば、蚊が媒介するマラリア、ジカ熱、西ナイル熱、そしてデング熱などの感染症により、年間72.5万人もの人が亡くなっている。

ネッタイシマカによって媒介されるデングウイルスネッタイシマカによって媒介されるデングウイルス(エルサルバドル大学健康開発研究センター、写真:ロイター/アフロ)

 WHOの今年4月末までの報告によれば、2024年に世界で760万人ものデング熱症例(重症症例1万6000人以上、死亡者数3000人以上を含む)があったという。これは、2023年の460万人をすでに大きく上回る水準で、世界的な感染拡大が見られている。

感染拡大するデング熱感染拡大するデング熱(エルサルバドル大学健康開発研究センターの研究者、写真:ロイター/アフロ)

 日本では、海外で感染した人が入国する輸入デング熱の症例が注目されている。近年、年間報告数は、数百件程度で推移しており、2019年には459件のピークとなった。その後、コロナ禍により入国者が減少したこともあり数は減っているが、今後、海外との人の移動が増えると報告数も増加する可能性があるため、注意を要する。

 デング熱は特効薬がないため、感染予防が重要とされる。

 厚生労働省のホームページでは、蚊に刺されないようにするために、「露出した皮膚には虫除け剤を使用する」「長袖のシャツや長ズボンを着用し、できるだけ肌の露出を避ける」「屋内では網戸やエアコンを使用し、蚊の侵入を防ぐ」「蚊のいる環境では、就寝時には殺虫剤処理された蚊帳を利用し、昼寝の際も使用する」といったことが挙げられている。