「理数系は男子が得意」は思い込み

 少し補足しよう。この議論の大前提にあるのは、「男子は理系に、女子は文系に向いている」という主張は疑わしいという事実である。

 国際的な学力調査では「数学や科学の成績は男子がよい」という結果もあれば、その逆や「性差はない」との結果もあり、一貫していない。にもかかわらず、日本では理工系の学部に、圧倒的に男性が多く志願し、入学しているのである。

拡大する「女性枠」、文科省も推奨

 入試の女性枠導入は、「生まれ」によって学生集団に生じている偏りを是正する方策であり、アファーマティブ・アクションと呼ばれる。アメリカのように、人種などを基準としたアファーマティブ・アクションが、入試制度に長年採用されてきた国もあるが、日本での動きは、ここ数年のものだ。

◎参考記事:親非大卒枠、地方出身枠、女子枠…大学入試のアファーマティブ・アクション、拡充でも公平性達成は程遠いワケ

 文部科学省は通知のなかで、「家庭環境、居住地域、国籍、性別等の要因により進学機会の確保に困難があると認められる者」などをターゲットにした入試制度の導入を、推奨している。京大と似たような入試制度の導入は、今後も各大学で進むだろう。

 アファーマティブ・アクションは「積極的差別是正措置」などと訳される。入試の女性枠でいえば、大学に女性が少なすぎることを「差別の結果」と捉える視点が、そこにはある。しかし「女性枠は逆差別だ」と不満に思う男性も、少なからず存在するだろう。

 入試における「女性枠」の是非は、「平等で公正な社会とは何か」をめぐる議論を実践レベルで展開する「応用問題」といえるのだ。

(第7回につづく)