「女子枠で入ったんやろ」と白い目で見られる懸念も

あやね:女子枠設置の目的は理解できるんですけど、入った後のことがあんまり考えられてない。男女比はある程度は是正されるけど、入った後、その女子が肩身の狭い思いをする状態は、そこまで変わるわけでもないし。

 女子が批判されるような状態になってしまうのは良くないと思うので、それだったら、男子枠も作れば良かったのになあって。

けんた:批判されるっていうのは、どういう意味で?

あやね:「女子枠で入ったんやろ」みたいな。

けんた:特色入試で合格したっていうことは、評価されるに足るだけの課外活動の実績とかがある生徒っていうことになります。学問における関心とか意欲とか実績で評価されるものはある、それは担保されてると思うんです。

 でも、「一般入試で入られへんのに、入ってんやろ、ラクしやがって」みたいに偏見も生まれてしまうと思うので、やっぱり大学側の「こういう意図があって、ちゃんと実力は見てます」みたいな情報発信は、必要ではないかと。

岡邊:女性が少ないこと、理学部8%、工学部10%っていうことについて、「いや、別にそれで問題ない」っていう人はいる?

(誰もうなずかない)

岡邊:そうですか。そこの問題意識は、共有されているわけね。そうすると、反対の人は「もっと違うやり方だったらいいんじゃないか」って意見でしょうかね? 

 “入った後”への配慮という、現役学生らしい視点も示された “入った後”への配慮という、現役学生らしい視点も示された
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卵が先か?にわとりが先か?

しおり:私、反対なんですけど、さっきの話にあったみたいに、女子枠として女子をちょっと増やして、それで満足になってるんじゃないかなと。

 入学したからといって、そこから女性の研究者になろうと思う人がどれだけいるのかもあんまり分からないし、育児で一回休職とかしても、そっから戻れるような制度とか、研究をする女性が助かるような仕組みとかを設けない限りは、女子枠を増やしたからといって、あんまり意味がないというか、表面的な感じで終わるんじゃないかなと思います。

けんた:そもそも女性研究者の数が少ないと、出産とか育児とかで離れて、戻ってきづらいっていう問題が、ますます埋もれていっちゃうと思ってて。そういう労働環境を変えていくためには、やっぱり女性研究者の方が、声を上げていく必要があると思うんです。そのためには、女性研究者の母数を増やしていかないといけないんじゃないかなと。

岡邊:「どっちを先にするか」問題だけど、まずは増やさなきゃいけないって言ってるのが、けんたさんの意見だね。

しゅんすけ:京都大学っていう、割と影響力のある大学が、こういう積極的な取り組みを行うこと自体が、世の中の女性の社会参加への契機になるのではないかなっていうふうに思うので、僕は賛成です。

岡邊:起爆剤的な位置づけで、捉えるということですね。今回の制度の導入で、一般入試の女子の志願者が増えてくることが、たぶん期待されてるんだけど、ここはどうなるか、大学としてはたぶん、戦々恐々だと思う。

 10年ぐらい前、九州大学で、似たような仕組みで女性枠を作ろうとして、反対がむちゃくちゃ大きくて、導入できなかったっていうことがありました。

 今回の京大の新制度も、数年後、もしかしたら「もっと進めよう」って話になるかもしれないし、撤退する、みたいなことにもなりうる。そういう分かれ目が、数年後に来るかもしれないですね。

 時間をすぎたので、今日はこれで終わりにします。