(3)外務省

 戦いは国家間の対立であり、普段から相手国の政治情勢や軍隊の状況(兵力や士気・練度、兵器・装備など)を把握することが求められる。

 どの国も武官を派遣し、軍事情報の収集に余念がない。その情報は言わずもがな武官の所属する国防省に報告され、戦力増強等に反映される。

 ところが日本において軍隊でないために「防衛駐在官」と称し、しかも外務省に出向して外務事務官として勤務する。

 名刺は「1等書記官兼ねて1等陸佐」や「参事官兼ねて海将補」と記されてきたが、近年ようやく自衛官の階級を先に書けるようになった。

 しかし外務事務官に変わりはなく、報告は外務省に上がり、外務省で選別して防衛庁(省)に還流する。

 人間の常、組織の常で、情報で優位に立ちたい外務省は肝心の軍事情報でもなかなか防衛省に流さないことが多い。

(4)総務省

 電波問題がある。

 HF、VHF、UHF、SHFの各周波数帯において自衛隊への割り当て周波数は極めて少ない。

 その周波数を各部隊に割り当てられると相互に干渉する。多くの部隊が沖縄に集結した場合の混乱が予測される。

 敵のジャミングを受けた場合にも(狭い帯域のために)周波数変更ができない。

 前記鼎談で元陸幕長は、有事にはある程度解放されると総務省から言われているそうであるが、常に民間優先で平素の電子戦訓練も支障が起きているという。

(4)財務省

 「財務省に国を思う心なし」とは、元財務官僚で評論家の高橋洋一氏が月刊紙『WiLL』(2023年1月号)に寄稿している論文の表題である。

 財務省は「我ら富士山、ほか並びの山」と自負し、霞が関を支配する巨大官庁だという。

 その財務省(前大蔵省)から防衛庁の経理担当局長は出向してきていたし、省になった今も会計課長は財務省の出向だという。

 プライマリーバランスを重視する財務省は切り込めるところをどんどん切り込んできた。

 防衛費を無駄とは思っていなかっただろうが、小隊や中隊として機能する部隊を半分に削ったり、対抗する戦車の性能がアップしたから日本も戦車の性能アップを行うと、性能が2倍になったのなら数量は半分でいいですねと主計官は平然と言い放ったという。

 対空ミサイル部隊は毎年米国で実弾射撃訓練を行い、中隊長の指揮能力を確実にしてきた。

 ところが、対艦ミサイルが装備されても予算の増加がないため高射部隊と対艦ミサイル部隊の実射訓練を交互(2年に1回)とした。

 こうして実射訓練を経験しない中隊長(幹部)もいることになる。

 防衛省が所有する庁舎(隊員たちの隊舎や隊員家族の官舎なども含む)や倉庫、管制塔は2万3000余棟あるが4割の1万棟弱は旧耐震基準のままだという(小笠原理恵論文、『Hanada』2023年2月号所収)。

 3文書発出に際して防衛省は必要なものを洗いざらい積み上げると50兆円超になったとされる。

 認められても執行できないと問題だとしてさらに精査して48兆円を要求した。

 財務省の提示は30数兆円台で従来とほとんど変わらなかった。

 政府が海保や外務省関係のODA(政府開発援助)などを含める考えをもっていたことからすると、純粋の防衛予算はむしろ削減に等しかった。

「国を思う心なし」は至当な表現である。