ペットボトル症候群への認知度はまだ高くない

 ただ、ペットボトル症候群の認知度は、まだ高くないかもしれません。

 市場調査会社のクロス・マーケティングが全国20〜69歳の男女1100人を対象に実施した「ペットボトル飲料に関する調査 2024年」によると、ペットボトル症候群についてその内容を示して尋ねたところ、「知っていて普段から気をつけている」は13.8%、「知っているが、特に気にしていない」は16.6%でした。両方を合わせても、30.5%に過ぎません。

 つまり、ペットボトル症候群のことを知っていた人は、3割しかいなかったのです。

 また、「知らなかったが、特に気にならない」は42.0%。これに「知っているが、特に気にしていない」の16.6%を加えた“ペットボトル症候群など気にしない派”は、6割近くに達しています。近年は健康志向がますます強まっているとされていますが、自分は関係ないという人はまだかなり多いようです。

 一方、清涼飲料水のメーカー側はどう対応しているのでしょうか。

 飲料の大手企業などでつくる全国清涼飲料連合会のデータによると、清涼飲料水の需要はコロナ禍で一時落ち込んだものの、それ以降は再び上昇基調を続けています。2023年の生産量は前年比2.2%増の約2323万klとなり、過去最高を記録しました。500mlのペットボトルを国民1人が毎日1本飲んでいる計算です。

 販売額も過去最高で、4兆4460億円に達しています。品目別の割合を見ると、コーヒー飲料と茶系が上位1、2位ですが、ペットボトル症候群に関係する果実飲料(8.9%)、スポーツ飲料(7.9%)もそれなりの販売額を持っています。

 同連合会はペットボトル症候群について、「これは糖尿病の自覚のない人が、症状のひとつ『喉の渇き』を癒すため、砂糖が入ったペットボトル飲料を多飲していたことで名づけられた造語」としたうえで、この症状を引き起こすのは、「少なくても1カ月以上、10%程度糖分を含む清涼飲料水を毎日1.5リットル以上」飲んだ場合だとしています。

 しかし、各地の医療機関や保健所は再三、ペットボトル症候群の危険性について警鐘を鳴らしています。

 いずれにしろ、自身の健康に直結する問題です。飲料を利用する際にはパッケージに記された栄養成分表示に注意を払いたいもの。そして何より、猛暑が続くなかで熱中症や脱水症状を避けるためには、水分補給が欠かせません。その際、ペットボトル症候群を避けるためには、水やお茶を優先的に摂取することが望ましいでしょう。

フロントラインプレス
「誰も知らない世界を 誰もが知る世界に」を掲げる取材記者グループ(代表=高田昌幸・東京都市大学メディア情報学部教授)。2019年に合同会社を設立し、正式に発足。調査報道や手触り感のあるルポを軸に、新しいかたちでニュースを世に送り出す。取材記者や写真家、研究者ら約30人が参加。調査報道については主に「スローニュース」で、ルポや深掘り記事は主に「Yahoo!ニュース オリジナル特集」で発表。その他、東洋経済オンラインなど国内主要メディアでも記事を発表している。