- 「待て」の後も締め技が続き、一本負けをした男子60キロ級の永山竜樹選手の試合など、柔道で“誤審”疑惑が相次いだ。
- だが、新聞・テレビでは疑惑やSNSの反応に関する報道が中心で、誤審そのものを検証する報道はほとんど見られなかった。
- そうした読者ニーズと正面から向き合わない姿勢は、新聞・テレビ離れを一段と加速させる可能性がある。
(田中 充:尚美学園大学スポーツマネジメント学部准教授)
パリオリンピックが開幕し、柔道の“誤審”疑惑が世間を騒がせている。
「(開催国の)フランスひいきしすぎ」「柔道を五輪の競技にする必要ある?」などと様々な声がSNSなどにも投稿される。批判的な声とはいえ、柔道に関心が向けられている証左でもある。
ところが、新聞紙面やテレビ報道をみていると、“誤審”問題を深掘りした扱いは少ない。ネット配信の記事には、SNS上の投稿を紹介する「こたつ記事」が多発している。4年に一度のオリンピックは人生最初で最後の大舞台になる選手も多い。あってはならない誤審の疑惑が生じたとき、正否も含めた既存大手メディアの検証、あるいは解説の記事がなぜほとんど見当たらないのか。
オリンピック報道が、読者ニーズと乖離している現状を物語る。
「誰がなんと言おうと私たちは柔道ファミリーです!」
柔道男子60キロ級日本代表で銅メダルを獲得した永山竜樹選手(SBC湘南美容クリニック)が7月30日、自身のX(旧ツイッター)を更新し、準々決勝で敗れたガリゴス選手(スペイン)とのツーショットを投稿すると、たちまち称賛の声が上がった。投稿から14時間後に確認した時点で31万のいいね!がついていた。
柔道は7月27日の競技初日から、両者の対戦における“誤審”疑惑で大混乱に陥った。「待て」がかかった後も永山選手が数秒ほど絞め技をかけられ続け、一本負けしたのだ。永山選手は直後には納得がいかず、握手を拒み、映像確認を求めてしばらく畳からも降りなかった。