会社勤めのビジネスパーソンだと、職場を去る65歳以降になると仕事がなくなり、好きなだけ寝られる環境になる。時間を持て余すと睡眠時間が延びる傾向にあるほか、高齢者の睡眠時間を長くしようと指導した結果、睡眠薬を使うケースもあるという。遠藤氏は「睡眠が長ければよい」という思い込みが、多くの弊害を生んでいると指摘している。
学校週5日制と不登校との関連とは?
子どもにとっても睡眠時間は大きな問題だ。それは土曜日を休みとする週5日制が学校で導入されたことも影響しているという。
公立の小中学校や高校で土曜日が休みになり始めたのは1992年。その後、毎週土曜が休みになる完全な週5日制になったのは2002年のことだ。
すると、週末にゆっくりできるようになった児童・生徒たちに「ソーシャル・ジェットラグ」という問題が発生することになった。「ソーシャル・ジェットラグ」とは、平日は夜遅く寝て朝早く起き、休日は遅くまで寝ているという睡眠リズムのズレを表す言葉だ。
単純に「長い時間寝る」ことだけを重視して、その質や内容について考えずに、睡眠管理の重要性を指導しないままいると、ソーシャル・ジェットラグを生み出してしまい、悪い睡眠習慣を作り出してしまいます。
この睡眠リズムのズレは「体内時計」のズレにつながる。体内時計は、眠くなる時間や目覚めの時間を決める以外にも、ホルモンの分泌、心拍数、体温などの機能のタイミングを決めている。つまり体内時計が1時間遅れると、眠くなる時間も目覚める時間も1時間遅れるということになる。
その結果、生活リズムが乱れることで不登校が増えた可能性が考えられるというのだ。実際に、土曜日も休みで生活リズムの乱れやすい公立の方が、小中学生の不登校率が高いことが分かっている。