- 「いつまでも若く美しく、元気でありたい」…いつの世でも人類はそう願ってきた。その夢が、ここにきて現実のものになりつつある。
- 老化はどこまでコントロール可能なのか。老化研究の第一人者、慶應義塾大学の早野元詞氏が3回に分けて解説する。
- 第3回は、「老化という病気」をいかに防ぎ、治療していくか。AIを活用した最新の研究などから可能性を展望する。(JBpress)
(早野 元詞:慶應義塾大学医学部特任講師)
※この記事は、『エイジング革命 250歳まで人が生きる日』(朝日新書)から一部抜粋・編集したものです。
【連載】
【エイジング革命①】シワ・シミ・白髪・ハゲ…老化はコントロールできるのか?遺伝より後天的な要素が8割
【エイジング革命②】老化抑制や若返り…カロリー制限やNMNサプリ摂取など努力次第で「寿命の壁」は越えられる
老化という病気の二面性
「老化は病気である。病気であるからには治療できる」
これは私の師、シンクレア博士の持論でもあります。これに関する著書『LIFESPAN│老いなき世界』(原著2019年刊)も、世界的なベストセラーになりました。ハーバード大学医学大学院の遺伝学教授であるシンクレア氏は、実際、自らも病気にならないよう、つまり老化しないようにさまざまなケアを日々行っています。
具体的にはカロリー制限をして、NMNなどのサプリメントを摂取する。また環境をいつも少し寒いぐらいにしておく。なぜ、わざわざ寒くして我慢するのかといえば、強すぎるストレスは身体にダメージをもたらしますが、「適度なストレスは、老化の抑止力になる」というのです。
そればかりではないのでしょうが、確かにシンクレア博士は若々しい。半年ほど前に久しぶりに会ったときも、「もしかして本当に若返っているんじゃないか」と、少しびっくりしたほどです。
では、「老化が病気である」のであれば、それはどのような病気なのでしょう。
先述の通り、老化とは、動的な変化です。そして時間の経過による動的な変化は、次の二つに分けられます。「致命的な疾患」と、「身体機能の低下」です。
致命的な疾患とは文字通り、死亡率を高めるような変化です。たとえば心不全や腎不全などがそれに当たり、少し怖い表現をするなら「一度発症すると、今のところまず治りません」という不治の病です。
他方の身体機能の低下は、筋力低下や記憶力の衰え、関節のしなりが悪くなるなどの変化として現れてきます。その結果として「Q・O・L(Quality of Life:生活の質)」が落ちていく。決して致命的ではありませんが、結果的に人生を謳歌できなくなるような、健康寿命を損なう病だと捉えてください。
この致命的疾患と身体機能の低下が一体となった状態、それが「老化という病気」です。