- 「いつまでも若く美しく、元気でありたい」…いつの世でも人類はそう願ってきた。その夢が、ここにきて現実のものになりつつある。
- 老化はどこまでコントロール可能なのか。老化研究の第一人者、慶應義塾大学の早野元詞氏が3回に分けて解説する。
- 第2回は、近年の研究で明らかになっている細胞を若い状態に保つ具体的な方法を紹介する。(JBpress)
(早野 元詞:慶應義塾大学医学部特任講師)
※この記事は、『エイジング革命 250歳まで人が生きる日』(朝日新書)から一部抜粋・編集したものです。
【連載】
【エイジング革命①】シワ・シミ・白髪・ハゲ…老化はコントロールできるのか?遺伝より後天的な要素が8割
老化抑制から若返りまで
人間の身体には、約37兆個もの細胞があります。
このぼう大な数の細胞が正常でいてくれるからこそ、健康でいられる。歳を重ねてもそれなりの老化で済むのも、細胞の新陳代謝が正常に執り行われているからです。
仮に肌の細胞のどこかに異常が起きれば、それはシミやソバカスとなって現れるでしょう。あるいは、何かの原因で細胞分裂が暴走し始めると、がんなどの病気を発症します。
細胞が正常な状態を保っていれば、それもできれば若い頃の状態が維持されていれば、「老化の抑止」は可能です。それを目指して、世界の研究者が日夜研究しているといっても過言ではありません。
では、具体的にどうすれば良いのでしょうか。
近年の研究において、細胞を若い状態に保つ方法がいくつか明らかにされています。よく知られているのが、「カロリー制限」です。マウスレベルはもとより、ヒトに近いアカゲザルを使った長期の観察研究により、カロリー制限には長寿効果があることが確認されています。それによって、カロリー制限のメカニズムがヒトの健康にも応用できる可能性が高いと示されているのです。
さらに、糖尿病の薬「メトホルミン」の老化抑止効果も報告されています。1957年、フランスの医師ジャン・スターン氏がメトホルミンの抗高血糖作用を探究し、糖尿病治療への応用を初めて報告しました。それ以来メトホルミンは、ヨーロッパで糖尿病治療に広く使用され、アメリカでも1995年に導入されるなど、現在では2型糖尿病(T2D)治療の第一選択薬となっています。