未来の健康診断はこうなる

 エイジング・クロックを最初に提唱したのは、UCLAのスティーブ・ホバース博士です。2013年のことです。ホバース博士は、DNA配列における特定の部位(ヒトの細胞であれば353カ所あります)のメチル化パターンを利用して、細胞の年齢を推定する手法を開発しました。

 これがエイジング・クロックの第一世代であり、現在ではさらに研究が進んでいます。その結果、「グリムエイジ(GrimAge)」「DNAフェノエイジ(DNA PhenoAge)」といった第二世代、そして「デュンディンペース(DunedinPACE)」など第三世代の新たなエイジング・クロックが次々と開発されています。

 これらは暦年齢ではなく健康年齢を測定することで、疾患や死亡率の予測に有効です。一方で、それぞれ異なる年齢や人種の身体機能のデータを基に作られたアルゴリズムのため、どのような場面で使い分ければ有効なのかはまだわかっていません。

 いずれにしても、これらすべてがヒトの細胞年齢を推定する手段ですが、一連の手法からわかる事実があります。その人の暦年齢との違いです。いわばそれが健康年齢であり、実年齢は35歳だけれども、細胞年齢(健康年齢)はまだ20歳ぐらいで「とても若いですね」、というわけです。

 たとえば、健康診断の項目に「エイジング・クロック測定」が加わる未来はこんな感じです。

「あなたの実年齢は40歳ですが、エイジング・クロックすなわち老化度は60歳です」
 ですから今すぐ、カロリー制限をしてください。睡眠時間を増やしてください。この飲み薬を服用してください――。

 このように未来の社会では、「飲み薬=化合物」で細胞が若返る治療が実現されるのです。SFでは決してなく、いずれ必ず訪れる社会です。

【連載】
【エイジング革命①】シワ・シミ・白髪・ハゲ…老化はコントロールできるのか?遺伝より後天的な要素が8割
【エイジング革命②】老化抑制や若返り…カロリー制限やNMNサプリ摂取など努力次第で「寿命の壁」は越えられる

エイジング革命 250歳まで人が生きる日』(早野元詞著、朝日新書)
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