瑠奈被告の矯正は可能か?

斎藤:本人が家族を支配し始めた段階で、家族は距離を取るべきだったと思います。たとえば、一回家から避難するとか、犯罪行為があった場合にすぐに通報するとか、そのように外部の視点を導入することによって、瑠奈被告は支配を諦めることができたと私は思います。

──たしかにそれは可能ですし、そうするべきではありますよね。

斎藤:誤解されがちですが、子どもは親を支配できません。経済的に支えているのが親だからです。「あなたの面倒をもう見ない」と言われたら、子どもはアウトなのです。

 長い間のマインドコントロール的な関係があって、子どもによる支配が成立してしまうことはままありますが、親がそうした関係を本気でやめさせようとすれば、それはできる。一度家を離れるとか、通報するとか、そうした方法で正気付けることは十分可能だと私は思っています。

 今後の展開としてあり得ることは、瑠奈被告が収監されたり、服役したりして、そこで社会性を獲得するということです。刑務所に入ることが治療として働くということが期待できる。そこから、今回の事件に対する反省や再発予防、償いということを考えてほしいと思います。

 過去にも、引きこもっていた方が犯罪をして、服役して、そこで社会性を獲得したというケースに出会ったことがあります。瑠奈被告に関しても、社会から隔絶された場所でかなり歪な方向に考えが向かってしまったと思いますけれど、この歪さに関しては、刑務所という社会の中で矯正される可能性は十分にあると思います。

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長野光(ながの・ひかる)
ビデオジャーナリスト
高校卒業後に渡米、米ラトガーズ大学卒業(専攻は美術)。芸術家のアシスタント、テレビ番組制作会社、日経BPニューヨーク支局記者、市場調査会社などを経て独立。JBpressの動画シリーズ「Straight Talk」リポーター。YouTubeチャンネル「著者が語る」を運営し、本の著者にインタビューしている。