解離性同一性障害はどのように治療するのか?

──解離性同一性障害の治療は、どのように行われるのですか?

斎藤:虐待や性暴力の被害など、過去にトラウマ的な経験があって、人格が分裂してしまっている場合は、まずトラウマの治療を考えます。

 もう一つのパターンは、それぞれの交代人格と治療契約を結んで、治療目標を共有してもらう。

「これから皆さんで体験や記憶の共有をしたい」とお願いします。それぞれの人格に消えてもらうのではなく、それぞれの体験や記憶の間に壁があることを伝え、「壁を取っ払って皆で経験や記憶を共有できるようにしていきませんか」と提案して、統合を目指すという方向に持っていく。

 また、解離性同一性障害があると言っても、それぞれの人格とうまく契約を結ぶことができれば、そうした問題を抱えながらでも日常生活を送ることができる方もいます。そのような場合には、無理に統合を図らないという方針も可能です。

──瑠奈被告は引きこもり生活を続け、一人で外には出られず、外出の必要がある場合には、親に車で送迎してもらっていたようです。にもかかわらず、ゲームセンター、怪談バー、ナイトクラブ、ラブホテルなど、刺激的な場所を訪れ、最終的にあれだけ猟奇的な殺人を行いました。両極端な行動を取っているように見えます。

斎藤:私の経験では、引きこもり生活が長い方が、そうした場所に行く可能性は非常に低い。「社会が怖い」「人が怖い」という意識が強いですから。特にセクシャルな場所へ訪れることはたいへん稀で、私自身はそうした患者さんに出会ったことはありません。

 ただ、瑠奈被告に解離性同一性障害が合併していたとしたら、交代人格が出ている時に、性的に奔放になるということはあり得ると思います。私自身はそうした事例の方に出会ったことはありませんが、そうした事例は十分にあり得るとは思います。

現場となったススキノのホテル(写真:共同通信社)現場となったススキノのホテル(写真:共同通信社)