- テレビ討論会で、バイデン大統領が衰えを見せたこともあり、金融市場ではトランプ氏の勝利メインシナリオになりつつある。
- トランプ氏が志向する減税、拡張財政、移民制限などの政策はリフレ的で、それらの政策を実施すれば、インフレ圧力は高まる。
- そもそも大統領選挙後のドル/円相場は勝利政党にかかわらずドル高・円安に振れやすい。そう考えると、米大統領選後はドル高と考えるのが自然だ。
(唐鎌 大輔:みずほ銀行チーフマーケット・エコノミスト)
トランプ再選はひとまず円安・ドル高材料
米国大統領選挙まで4カ月を切った。日本時間6月28日に開催された両党候補によるテレビ討論会は現職であるバイデン米大統領の衰えを露呈するイベントとなり、本番を待たずにトランプ氏の勝利が既定路線になったという声が目立つ。
バイデン大統領の悲惨な姿を前に、同氏の出馬撤回、これに伴う代替候補の出現を経て民主党が逆に優勢になるという半ば冗談なのか本気なのか分からない観測まで浮上している。
とにもかくにも、金融市場はトランプ氏の再選をメインシナリオに価格形成を進めている。討論会後の米金利急騰とこれに伴うドル/円相場の上昇は第二次トランプ政権に対する直感的なイメージに基づいた反応だ。
前回のトランプ政権ならびに現時点の同氏の言動を踏まえる限り、財政政策は拡張路線、通商政策は保護主義路線、移民政策は制約という組み合わせが予見される。これらを同時に行えば、普通、国内のインフレ圧力は高まる。
なお、仮にトランプ政権を前提とした場合、為替市場にとって決定的に重要な通貨・金融政策に関して言えば、通貨政策はドル安、金融政策も緩和路線を支持しそうなことは想像に難くない。
しかし、そうした思想と共に奔放な発言を重ねた2016~2020年の前政権時代、FRBは利上げを重ねて米金利は上がり、ドルも上昇した。トランプ氏が何を言おうと金融政策が変わるわけではないし、通貨政策は結局、金融政策に規定される。
いくらトランプ氏がドル安への選好を示しても、実行されそうな政策が軒並みリフレ的な性格を有している以上、そう簡単に通貨・金融政策はハト派方向に動けないと考えるのが基本だ。