バイデンの決定の陰に強硬派女性3人

 なぜ、バイデン氏はそれほどまでに大統領2期目を狙うのか。

 ワシントン・ポスト紙のトルース・オロランニッパ記者は、時系列的にバイデン氏の発言の変化を追っている。

一、2020年3月、「私は(世代、人種、性別を超越した新しい時代への)架け橋になる存在だと考えている。それ以外ではない」

一、(中間選挙で民主党が善戦した後の)2023年12月、「もしトランプ氏が大統領選に出なければ、私は立候補しないこともありうる」

 実は、「バイデン氏は2024年大統領選には立候補せず、誰か新しい候補を選べ」という声は2022年9月時点で56%もあった。

 バイデン氏が正式立候補した時でさえ、再出馬を支持した民主党支持者は、47%しかいなかった。

「架け橋」になると言っていたバイデン氏の心変わりは、トランプ氏の立候補にあったことは明々白々だった。

 それを支持したのはジル夫人だった。夫人はこう言い切った。

「腐敗とカオスを巻き起こすトランプを選ぶか、それとも秩序と安定を維持するバイデンか」

 当時、民主党内には、デーン・フィリップ上院議員(ミネソタ州選出)が立候補する動きがあったが、自然消滅してしまった。

 左派のバーニー・サンダース上院議員(無所属、バーモント州選出)を擁立する動きもあったが、具体的動きとはならなかった。バイデン政権が左派の主張をかなり取り入れたからだった。

 バイデン氏が2020年、立候補するにあたって背中を押したのは孫娘のナオミ・バイデンさん(次男ハンター氏の長女)だったと言われている。

 バイデン家の面々とも近い作家のクリス・フィップルによれば、バイデン氏の政治生命をめぐる決定に最も影響力を持つ女性は3人だという。

 1人は、ジル夫人だ。教育学博士号を持っており、いまも短大で教鞭をとっている。

 2人目はナオミさん(30)、法務博士号を持ち、現在弁護士事務所に勤務。夫のピーター・ニール氏と共にホワイトハウスに住んでいる。

 そしてバイデン氏が上院議員選に立候補した時からこれまですべての選挙キャンペーンを取り仕切ってきた実妹のヴァレリー・バイデン・オーウェンズさん(78)。

「女3人組」のトランプ氏に対する危機感、憎悪心は収まることはないようだ。

 民主党の中には、「バイデン氏の選択は、長い政治家としての輝かしい業績よりも、自己中心的で個人的な憤りとして歴史に残る」と嘆く向きもあるが、実名を出して言う者はいない。