1975年(昭和50)4月6日、桜花賞を圧勝したテスコガビー。2着はジョーケンプトン 写真/共同通信フォト

(堀井 六郎:昭和歌謡研究家)

昭和歌謡研究家・堀井六郎氏はスポーツライターとしての顔もあります。とくに競馬は1970年から今日まで、名馬の名勝負を見つめ続けてきました。堀井氏が語る名馬伝説の連載です。

テスコガビーの桜花賞単勝配当は110円

 2024年5月19日、府中の東京競馬場で行なわれた3歳牝馬の頂点を競う今年のオークスは、2番人気だった名手ルメール騎乗のチェルヴィニアが1番人気のステレンボッシュを半馬身差退けて桜花賞2着の雪辱を果たしました。

 単勝の配当は460円、ルメール騎手は8年間でなんと4度目の樫(オークス)の戴冠となりました。

 近年の「樫の女王」の中から女傑と称された勝ち馬の単勝配当を振り返ってみると、2009年のブエナビスタが140円、18年のアーモンドアイが170円、20年のデアリングタクトが160円、23年のリバティアイランドが140円で、この中のブエナビスタとリバティアイランドの140円というのが歴代の単勝最少配当になります(07年のウオッカはダービーに出走したため、オークスは未出走)。

 ブエナビスタの場合、オークスのひと月前に開催された牝馬クラシックの1冠目「桜花賞」勝利のときの配当が120円(つまり1.2倍という圧倒的な人気)で、この単勝配当の少なさがブエナビスタの人気と強さを表わしていました。  

 この85年に及ぶ長い桜花賞の歴史でブエナビスタの単勝配当120円よりさらに低金額だった人気馬が2頭いました。1957年のミスオンワードと1975年のテスコガビーです。

 67年前のオークスで勝利したミスオンワードの単勝は100円。つまり100円の単勝馬券を購入し当たっても戻ってくるのは100円、という元返し馬券ということになります。テスコガビーの場合は110円だったので、100円馬券だと10円儲けたことになります。100万円購入すれば10万円の実入りとなるので、いつの世もお金持ちにはかないません。

 1954年生まれの私はさすがにミスオンワードのレースは見ていませんが、テスコガビーのレースはほとんどリアルタイムでその雄姿(雌姿かな)をテレビ観戦、今から半世紀近く前になるレースを興奮しながら見ていた記憶が甦ります。