国の半導体支援、GDP比で日本は米国以上
4月に財務省が公表した資料によると、日本は3年間で3.9兆円を半導体産業の支援に充てます。半導体産業に対する支援の対GDP比は米国0.21%、ドイツ0.41%、フランス0.2%に対し、日本は0.71%と国力に対する半導体支援の規模が大きいことがわかります。
3.9兆円のうちTSMCに約1.2兆円の巨額支援で熊本県へ工場を誘致し、最先端半導体製造を目指すラピダスには約9000億円を充てます。
ラピダスとは、トヨタ自動車やソニーグループ、NTTなど8社が73億円出資し22年に設立された半導体企業で、スーパーコンピューターやAI向け半導体として需要を見込む幅2ナノ(ナノは10億分の1)メートルの最先端半導体の製造を目指しています。工場は北海道千歳市に建設しており、27年ごろに量産化する予定です。
経済産業省は2030年までに半導体分野の国内売上額を15兆円超(20年は5兆円)とする目標を掲げ、国をあげて半導体産業の強化に乗り出しています。
米国では「CHIPS・科学法」が22年に成立し、半導体産業に527億ドル(約8兆円)の補助金を投じます。欧州でも23年に欧州半導体法が成立し、30年までに官民で430億ユーロ(約7兆円)を投じる方針で、半導体生産の世界シェアを現在の1割から30年までに2割に高めることを目指しています。
韓国でも5月下旬に尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が国内の半導体分野を対象に26兆ウォン(約3兆円)の支援策を公表。同国のサムスン電子やSKハイニックスを後押しします。
中国も資本金を3440億元(約7兆4500億円)とする半導体産業支援の政府系ファンドを立ち上げたことが明らかになっています。米中対立が深まるなか、次世代の半導体のサプライチェーンの構築を急ぎたい考えです。
生成AIの基盤となる半導体の開発競争が国をあげて激しくなるなか、世界の株式市場では今後も半導体株が全体を牽引する状況が続くと見られ、関連する銘柄に注目が集まります。
【主な参考資料】
NVIDIA Announces Financial Results for First Quarter Fiscal 2025(NVIDIA)
NVIDIAの歴史(NVIDIA)
半導体・デジタル産業戦略(経済産業省)
財政制度等審議会(財務省)
■エヌビディア株だけじゃない“生成AI祭り”
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