欧州の防衛株が躍進、防衛ETFも登場
ロシアによるウクライナ侵攻の長期化を背景に、特に欧州の防衛企業が株式市場での存在感を高めています。欧州のストックス航空宇宙・防衛株指数は昨年末から3割超上昇しており、米国S&Pの同様の指数(同6%高)を大きく上回っています。
3月に新たにNATOに加盟したスウェーデンの防衛大手サーブの足元の株価は約250スウェーデン・クローナ(約3700円)と23年末比で6割超上昇しています。サーブは1937年に設立され、従来はスウェーデンの自動車ブランドとして日本でも根強い人気を誇っていました。自動車製造終了後は防衛事業を伸ばし、戦闘機や弾薬などを世界市場に供給しています。
戦闘機や原子力潜水艦など幅広い軍事製品を提供するイギリスのBAEシステムズの株価は23年末から25%上昇。防衛需要の高まりを受け受注が拡大し、23年12月期の純利益は18億5700万ポンド(約3500億円)と22年12月期から2割近く増えました。BAEはこのほどサイバーセキュリティー分野で日本にも進出しています。
英国や日本と次期戦闘機を共同開発するイタリアの防衛大手レオナルドは23年末の株価から6割程度伸びているほか、エンジン大手のイギリスのロールス・ロイス・ホールディングスも5割ほど上昇。防衛部門を持つエアバスも1割超上昇しています。
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防衛株への投資家の関心が高まっていることから、23年には米国の運用会社であるヴァンエックの防衛株を組み入れたETF(上場投資信託)「ヴァンエック・ディフェンスETF」がロンドン証券取引所とドイツ取引所に上場。ヴァンエックによると防衛株に投資する欧州で初めてのETFといいます。
特に欧州などで防衛企業への投資はESG(環境・社会・企業統治)が重要視される風潮の中で敬遠されてきましたが、ロシアによるウクライナ侵攻後は、持続的な社会に向け人権を守る手段として防衛産業が重要視されるように変化しています。