(英フィナンシャル・タイムズ紙 2024年4月25日付)

マイク・ジョンソン下院議長の翻意によってウクライナ支援法案は可決された(4月20日、写真:ロイター/アフロ)

 注意深く観察すると、米共和党が円陣の形の銃殺隊を組んでいることが分かる。

 引き金は4月20日になってようやく実施された、610億ドル規模のウクライナ支援法案についての採決だった。

 共和党議員の票はほぼ真っ二つに割れた。おまけに、この採決での賛成と反対の違いはウクライナよりもはるかに大きかった。

 なぜなら、これは折り合うことの決してない世界観の違いを表しているからだ。

 ニューヨークの裁判所の薄暗い法廷で、来る日も来る日もイライラしながら座っているドナルド・トランプでさえ、共和党内のグローバル主義者と反グローバル主義者の橋渡しはできない。

ウクライナに思いも寄らぬ救世主

 共和党議員はお互いを敵呼ばわりしている。

 テキサス州選出の下院議員のトニー・ゴンザレスは「議会のメンバーであることは大変光栄だが、同僚のなかには本当にゲスな野郎もいる」と言い、党内の予備選挙の対抗馬である「ネオナチ」が同僚の下院議員数人から支援を受けていることに言及した。

「あいつらは白い頭巾(白人至上主義団体クー・クラックス・クラン=KKK=がまとった衣装)をかぶって夜な夜な歩き回っていた。今じゃその格好で昼日中に歩き回っている」

 上院院内総務を務める共和党トップのミッチ・マコネルの発言も、これより少しおとなしいだけだった。

 ウクライナへの資金拠出については「この瞬間をこれまで遅らせてきた躊躇と近視眼の大部分は、完全なフィクションがその根拠になっている」と述べた。

 最新の、そして最も重大な不和を共和党内にもたらしたのは、意外な気骨の発揮だった。

 筋金入りの福音派信者で、下院議長の座にあるマイク・ジョンソンは、下院が支援を可決しなかった場合にウクライナがたどる悲惨な運命について米諜報機関から説明を受けて突如「回心」した。

 思いも寄らぬウクライナの救世主は、2020年の大統領選の結果をいまだに否定している人物だ。

 同様に陰謀論をよく口にするニュート・ギングリッチ――下院議長を1990年代に務めた人物――は、結果がどうなろうとウクライナを支援するようジョンソンに促した。

「勇敢な人間は一度しか死なない」と言い、「そして臆病者は100回死ぬ」と続けた。