(英フィナンシャル・タイムズ紙 2024年4月8日付)
今年はどこか2021年っぽい雰囲気を帯び始めている。
ビットコインが急騰を演じ、高齢の米国人男性が自由世界のリーダーシップを別の高齢の米国人男性に譲りそうな気配が漂い、起業家のイーロン・マスクは「ドージコインが月へ行く」といったようなことを言い、いわゆるミーム株(はやり株)が復活を遂げている。
そうしたミーム株の一つが特に大きな関心を集めており、その会社はたまたま、上述の高齢男性の1人によって株式の過半が所有されている。
トランプ・メディア・アンド・テクノロジー・グループがそれだ。
「DJT」上場で前大統領に莫大な利益
「DJT」(ドナルド・ジョン・トランプのイニシャル)のティッカーで売買されている同社は3月下旬、特別買収目的会社(SPAC)として知られる「白紙小切手」会社との合併を通じて上場を果たした時に株価が高騰した。
SPACもまた2021年に逆戻りしたかと思わせるような存在だ。
株価が一時50%も跳ね上がると、何億ドルもの法的な罰金を払うために金策に奔走していたトランプは、たった1日で自身の資産が数十億ドルも膨らむところを目の当たりにした。
数日後、会社のお粗末な決算内容を受けて株価が急落すると、今度は時価総額が10億ドル以上吹き飛び、多くの人がほくそ笑んだ。
6カ月間のロックアップ期間があるため、トランプはまだ持ち株を売却できないが、それでも彼が保有している約60%の株式は――少なくとも計算上は――40億ドル近い価値を持つ。
これがすべてトランプの抜け目のなさのおかげだと考えていいかどうかは議論になるが、議論の余地がないのは、恐ろしいほどの運の良さだ。
そして、会社が実際に利益を上げているか否かといったファンダメンタルズの要因だけに基づいて株価は上げ下げするという、現時点ではかなり古風なものの考え方をする人は、これに頭にきている。
メディア界の大物のバリー・ディラーはCNBCの番組で「だいたい、なんでこれについて話しているんだ?」と憤り、トランプ・メディア株を買っている人を「マヌケ」と呼んだ。
「これは詐欺だ。(トランプが)これまでに関与したすべてのものが何らかの形の詐欺だったのと全く同じだ」