(英フィナンシャル・タイムズ紙 2024年3月26日付)
パレスチナ自治区ガザでの戦闘が始まった頃、動画共有アプリ「TikTok(ティックトック)」上で、ホワイトハウスのジョン・カービー戦略広報調整官の会見の動画が一気に拡散した。
動画の前半では、カービー氏は落ち着いた様子でガザの民間人の死を戦争の「残忍で醜い」現実の一環として説明している。
後半では、ウクライナでの民間人の死のおぞましさを描写しながら涙ぐむ。
バイデン政権を批判する向きにとっては、あの動画が米国のダブルスタンダードを要約している。
だが、ウクライナとガザの相対的な扱いに関する議論全体が、選択的な同情心についての大きなポイントを見落としている。
ウクライナとガザ、イスラエルの悲劇はいずれも、世界のその他地域の戦争と人道的惨事よりはるかに大きな注目を集めているのだ。
世界最悪の飢餓の危機を迎えるスーダン
ガザにおける飢饉(ききん)の脅威が現在、全世界で日々、ニュースの見出しを飾っている。
だが、国連は先週、「スーダンが間もなく世界最悪の飢餓の危機」になり、1800万人が深刻な食糧不足に見舞われていると警鐘を鳴らした。
国連は、650万人以上の市民が住まいを追われ、「大規模墓地や集団レイプ、人口密集地域での衝撃的なほど無差別な攻撃」を伴う現在進行中の紛争に焦点を当てた。
スーダン西部ダルフールの難民キャンプからの報告は、2時間に1人、子供が栄養失調で死んでいく様子を伝えている。
ガザと同様、スーダンもエジプトと国境を接している。だが、スーダンの紛争と先週の国連の警鐘は世界全体からおおむね無視されている。
国連は先月、スーダン向けの27億ドルの人道支援を求める活動を立ち上げたが、これまでに1億3100万ドルしか集まっていない。
ガザにとらえられているイスラエル人の人質を解放する努力が今、国際外交の最重要課題になった。
先週は米中央情報局(CIA)のビル・バーンズ長官が直接介入した。
対照的に、ナイジェリアで287人の子供が拉致された事件――幸い、多くが週末に解放された――は国際的な関心をほとんど集めなかった。